そのトラムの中心となっているのは、段差なしで乗り降りがしやすい低床車両(ノンステップ車)で、バリアフリー法の施行もあって多くの都市で採用されている。地下鉄や新交通システム(モノレール)などと異なるトラムの最大の利点は道路から気軽に乗れることであり、次世代型の乗り物としてのトラムは低床車両が必須ともいえる。
一方で、ステップがある旧型車両が残っている都市もまだ多く見られる。予算の都合で一気に車両の入れ替えができなかった、観光用や都市の目玉として残された、あるいはもともとトラムそのものを廃止する方向性だったので車両の置き換えが後手に回った――など、その理由はさまざまだ。
社会主義時代の面影「タトラ」
そんな旧型車両の中でも鉄道ファンに高い人気を誇り、今も多くの都市で活躍する姿を見かけるのが「タトラ」と呼ばれるチェコ製の車両だ。
19世紀に設立されたチェコ共和国(旧・チェコスロバキア)の老舗メーカー、CKD社が製造したトラム車両は、社会主義時代にはソビエト連邦が主導した経済圏、コメコン(COMECON、経済相互援助会議)加盟国へ大量に輸出された。
中でも1960年代から長期にわたって生産された「タトラT3型」シリーズは、約1万4000両というとんでもない生産台数を誇った。自国以外の納入・輸出先は、旧ソ連や同国と関わりの深い東欧諸国が多かった。老朽化のため現役を退いた車両も多いが、近代化が遅れている国や地域では、現役で使われているところも多い。

