とはいえ、「任せることが大事」という言葉自体は、誰もが知っています。それでも任せられないのはなぜか。我々は、任せられない上司を次の3タイプに分類しています。
① 自分で抱えるタイプ 「自分がやった方が早い」「人に頼むのは気が引ける」と考え、仕事を外に出せない人。周囲から頼られているように見えて、実は組織の成長を止めている張本人です。
② 作業ベースで渡すタイプ 「このやり方が一番正しい」と思い込み、仕事を“作業”として切り出して渡す人。部下には考える余地がなく、単なる下請けに堕とされていきます。
③ 丸投げタイプ 「自分ではやりたくない」「よくわからない」という理由で、責任も説明もないまま仕事を投げる人。任された部下は途方に暮れ、失敗すれば「やっぱり任せるんじゃなかった」と責められる。
例えば②の行動は、本人の主観では“良かれ”と思って選択している行動です。しかしその選択が、結果として部下から70%の学習機会を奪っている――。この構造を直視することが、権限委譲の出発点です。
「任せる」とは、放り投げることではなく“環境を設計する”こと
では、③の丸投げタイプはどうでしょうか。③でも、部下に「任せている」ようには見えます。しかし、ここで多くの管理職が陥る誤解を、ひとつ解いておく必要があります。任せるとは“信じて放つこと”ではなく、“信じられる環境を設計する”ことなのです。
権限委譲は、性格や度胸の問題ではなく、技術なのです。
我々は、そのためのテクニックは3つであると考えています。
任せる前に必要なのは、権限の境界線を明示することです。
・協議ゾーン:部下がまず考え、上司と壁打ちして方向性を決める範囲
・承認ゾーン:会社の利益やブランドに直結するため、必ず事前承認を要する範囲
この3つの境界線を最初に引いておくだけで、「勝手にやるな」と「なぜ相談しないんだ」という、あの矛盾したフィードバックは激減します。境界線がないから、部下は動けないのです。

