GLP-1受容体作動薬を使用した8万5015人と、体重への影響が比較的小さいDPP-4阻害薬を使用した8万5015人を比較したところ、約3.9年の追跡で、GLP-1受容体作動薬群では、14種類のがんの発症リスクが7%、総死亡リスクが8%低かった。なかでも結腸がんの発症リスクが16%、直腸がんが28%低く、いずれも統計学的に有意だった。
同様の結果は、ケース・ウェスタン・リザーブ大学の研究グループからも報告されている。2024年に『JAMA Network Open』へ掲載された研究では、2型糖尿病患者約165万人の診療記録を解析した。
対象としたがんは、食道がん、閉経後乳がん、大腸がん、子宮体がん、胆嚢がん、胃がん、腎臓がん、卵巣がん、膵臓がん、甲状腺がん、肝臓がん、髄膜腫、多発性骨髄腫の13種類である。
この研究では、GLP-1受容体作動薬の使用者は、インスリン使用者と比べ、13種類のうち10種類で発症リスクが有意に低かった。具体的には、食道がん、大腸がん、子宮体がん、胆嚢がん、腎臓がん、卵巣がん、膵臓がん、肝臓がん、髄膜腫、多発性骨髄腫である。
一方、胃がんではリスク低下傾向にとどまり、閉経後乳がんと甲状腺がんでは明確な低下を認めなかった。
減量は有望ながん予防策
GLP-1受容体作動薬は、血糖やインスリン抵抗性を改善するとともに体重を減らすため、がん予防につながる可能性は十分にある。ただし、いずれも診療記録を用いた観察研究であり、薬剤が直接がんを予防したことを証明したものではない。
薬剤を選択された患者の健康状態、糖尿病の重症度、所得や生活習慣などの違いが結果に影響した可能性も残る。GLP-1受容体作動薬を「がん予防薬」とみなすのは時期尚早である。発症予防効果を確定するには、がんを評価項目とした長期の無作為化比較試験が必要だ。結論が出るまでには、なお時間を要するだろう。
どの方法で、どの程度の予防効果が得られるのかは、今後の研究を待つ必要がある。だが、肥満ががんの危険因子であることは明らかであり、減量は有望ながん予防策と考えられる。

