館内に入ると、まず目に入るのは銀行である。そのほかにも、クリニック、子どもの一時預かり施設、体操教室、ハローワーク、パスポートセンターなどが入居し、ゲームセンターのあるフロアには授乳室も設けられていた。
伊勢丹時代、1階にあったお得意様サロンは消え、館内を歩いても百貨店だったことを思わせる痕跡は見当たらない。かつて百貨店だった建物は、「買い物を楽しむ場所」ではなく、「暮らしを支える場所」へと役割を変えていた。
前回で見たように、市は2017年、このビルの4階を借りて伊勢丹を支援しようとしたが、市議会で否決された。しかし伊勢丹閉店後、市は同じ建物にパスポートセンターを移転している。市議会の質疑によれば、その際の賃料は、2017年に提案された案の半分以下だった。
市議会が問題視したのは、市がこの建物を借りること自体ではなかった。伊勢丹を存続させるために高額な賃料を10年間負担する案に反対したのであって、より低い賃料で行政サービスの拠点として使うことは実現している。同じ建物を借りる案でも、その目的と賃料によって判断が分かれたのである。
③上の階へ行くほど、人がいなくなる
ただし、エスカレーターで上の階へ向かうと、館内の空気は少しずつ変わっていく。
11階のレストラン街では、飲食店が4店舗あるうち、サイゼリヤだけが満席だった。一方、その隣のフードコートにいた客は1組だけで、フロア全体は閑散としていた。
5階と10階には空いたままの区画が残り、「アートスポットまつど」スペースは利用者がいなかったため、花が飾られているだけの白い壁が広がっていた。

