ただし、そこにはアプローチの違いが存在する。日本メーカーは、中国市場でのサバイバルのための防衛的かつ受動的なバッジエンジニアリングを行っているのに対して、DR社の手法は、ヘリテイジをブランド名ごと取得して大衆向けに仕掛ける能動的かつ収益重視のバッジエンジニアリングである。
やっていることの本質は同じ生存戦略でありながらも、その方向性は全く異なっている。
DR社がイタリアで見せた躍進と、イターラやオスカを巻き込んだ多ブランド展開は、既存の欧州メーカーがプレミアム化やBEVシフトに注力するあまり、市場が本当に求めている安価で経済的な移動手段を軽視してきたことへのアンチテーゼともいえる。
一方で、自前の技術を持たず、他国のリソースや過去のブランド価値に依存する手法は、国家の法規制やブランドのアイデンティティという壁に直面しているのも事実だ。
しかし、電動化やデジタル化の波の中で、同社が提示した低価格戦略と名門ブランドの活用は、これからの大衆向けモビリティにおける1つの現実的な手法として、無視することはできないのだ。


