「ヤケーヌ」を開発したのは、愛知県西尾市にある丸福繊維。創業以来、農作業服を中心に手がけ、「農道即商道(商売を通じて農業の役に立つ)」の理念のもと、農家の声を生かしたものづくりを続けてきた。
しかし、農業の機械化や農業人口の減少、安価な輸入品の増加によって市場環境は大きく変化。同社は企業向けユニフォーム事業の立ち上げや、自社ならではの強みを生かしたオリジナル商品の開発にも取り組むようになった。
「農業現場の困りごとを解決する商品を作ることをコンセプトにしていく中で、農家の女性から『とにかく日焼けしたくない』という声を多くいただいたんです。当時、農作業中の日焼け対策といえば、タオルや手ぬぐいを顔に巻くのが一般的でした。しかし、息苦しかったり、作業中にずれたりと、快適とは言えませんでした」
日焼け対策の機能性と快適性を追求
そんな声から、商品開発がスタートした。マスクのような形状にすることは、比較的早い段階でかたまったが、口元を覆うため、どうしても息苦しさが残ってしまう。
そこで農家のモニターと何度も意見交換を重ねる中で、「口元は必ずしも密閉しなくてもいいのではないか」という発想にたどり着いた。開発期間は2年以上、試作回数は20回以上にのぼった。
そこから日焼け対策の機能性と快適性の両立を目指して改良を重ね、誕生したのが、口元に開口部を設けた特許取得の上下2部構造だった。
こだわったのは構造だけではない。生地にはチタンを練り込んだ高機能繊維を採用。表面にUV加工を施す「後加工」ではなく、繊維そのものがUVカット性能を備えているため、洗濯を繰り返しても効果が半永久的に持続するという。また、遮熱効果によって一般的なポリエステル生地より約3℃涼しく、炎天下でも快適に着用できるよう工夫した。
こうして商品は完成したものの、発売前の社内には不安の声も少なくなかった。

