私自身は東京生まれですが、大学入学まで渋谷や新宿に立ち入ったことがなく、初めて新宿の都庁周辺を歩いた際には、自然と背筋が伸びきったものでした。圧倒されるような大きなビルなんて、私の地元である足立区綾瀬や葛飾区亀有には、存在しなかったからです。それどころか、一軒家が立ち並ぶ住宅街が形成されていたり、やたらと広い公園があったりと、だいぶ土地をぜいたくに使っている印象があります。
いったい、どうして足立区・葛飾区などには高層ビルが少なく、新宿にばかり高層ビルが集まっているのでしょうか? 実は、この謎を解くヒントを得るためには、今から数万年も昔の「氷河期」までさかのぼる必要があります。
細かい経緯をすべて載せるとページが足りなくなってしまいますから、98%を割愛して結論のみ話すなら、「氷河期以降様々な山や谷が出来上がる中で、最も地面が固くて高台にあるのが新宿だったため、工事費が安く済むから」だそう。もちろん、ここに至るまでには複雑な川の流れや人の営みの記録があり、本書内ではそれらがすべて解説されています。
この謎が説明される途上にも「なぜ東横線は地面と同じ面を走ったり、高台面を走ったりするのか?」や「なぜ山手線駅には階段を上ってホームにたどり着く駅と、階段を下ってホームにたどり着く駅があるのか?」など、様々な謎が提示されては、瞬時に氷解させられていきます。
普段は気にも留めていなかった、日常生活に眠っていた違和感を、鋭く指摘されてはすぐに解説される快感は、きっと本書以外では得難いものでしょう。
「極貧の学生時代、この話を彼女にしたら全くウケなかった」などかわいらしく人間臭いエピソードも紹介される本書は、間違いなく日常の通学・通勤路を見る目線を変えてくれるはず。今日から一段違った目線を持ってみてはいかがでしょうか?
スーパーに置かれているご当地グルメこそが、本当の「ご当地の味」
普段何気なく訪れる地元のスーパー。「今日は鶏もも肉が安い、そういえば醤油が切れそうだったから買い足さないと……」と日常の思考に飲み込まれて、立ち寄るのはいつも同じコーナーばかりではありませんか?
「実は、スーパーこそ、街中で地理の学びが得られる最高の実地教材になる」。そう語るのは、ご自身も東京大学経済学部に推薦入学した現役東大生の下村英理氏です。


