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政治・経済・投資 #中国の特色ある「ヤバい経済学」

青空を作り株価を上げる…習近平の訪問先で大気汚染が20日前から改善?中国の政治指導者が持つ神通力の正体

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大気汚染に悩まされてきた中国。政治指導者の訪問前後は青空になる不思議な現象も(Du Bin/The New York Times)
  • 高口 康太 ジャーナリスト、千葉大学客員教授、明治大学客員研究員
  • 伊藤 亜聖 東京大学社会科学研究所准教授

INDEX

「形象工程」(見栄えプロジェクト)という中国語がある。実質的な意味はあまりなく、見栄えばかりを整えるために大金を注ぎ込むことを指す。豪華な政府庁舎やスタジアムといったインフラ建設に加えて、オリンピックなどの国際イベントや首脳の視察に合わせて、街並みをきれいに手直しすることも含まれる。

日本でも天皇陛下が出席される国民スポーツ大会に合わせて競技施設や道路を補修するぐらいはする。ただ中国が強烈なのは、大気汚染までコントロールすること。総書記が視察するところ、必ず青空になる――その実態を経済学の手法で解明した論文がある。

連載「中国の特色あるヤバい経済学」第2回(1回目はこちら
本連載は中国経済を専門とするジャーナリストの高口康太と研究者の伊藤亜聖が、国際学術雑誌に掲載された論文をもとに、中国に関して起きている摩訶不思議な事象をユニークな視点で解説していきます。データから示されるのはヤバい、エグい、そして時にちょっと笑える現実の数々……。

「影の国」並みに日が差してなかった?

タカグチ:大人気連載「中国の特色あるヤバい経済学」の第2回です。教科書には載らない、ちょっとマニアックな経済学論文から透けて見える中国経済の深層と課題を読み解きます。今回のトピックは?

イトウ:大気汚染です。以前はタカグチさんもよく記事を書いていたでしょ?

タカグチ:確かに2000年代末から10年代前半まで、中国ニュースといえば、汚染!爆発!毒食品!みたいなB級ニュースが全盛期でした。

イトウ:在北京のアメリカ大使館が08年からツイッター(現X)で独自計測したAQIを1時間おきに発表するようになり、10年末に上限を超えた汚染を「Crazy Bad」と表現して注目を集めました。それで中国人の間でも「大気汚染が深刻だ」という認識が広がりました。

大気汚染は首都の北京でも深刻だった。写真は2012年1月17日(写真:Gilles Sabrie/The New York Times)

正直2000年代半ばまで、市民もあまり気にしていなかったのではないかと思います。私は2006年に北京に留学していましたが、2008年の北京夏季オリンピックに向けて全土を大改造中。空気はひどいもので帰宅して鼻をかむとティッシュは真っ黒になるし、空を見るともやみたいなのがいつもかかっていました。ただ、私も周囲の人もあまり気にしていませんでした(笑)。

タカグチ:昔の北京は、映画『ロード・オブ・ザ・リング』に出てくる冥王サウロンが支配する影の国モルドール並みに日が差さない暗い日が多かったのですが、最近は見違えるようにきれいになりました。北京の藍天指数(青空指数、AQI100以下)の日数は13年の176日から25年は311日と倍近くに増えています。

イトウ:モルドールは言い過ぎじゃないですか(笑)。

大気汚染の改善が徐々に進んでいることは事実ですが、ただ重大イベントの時にはその程度じゃ足りないわけです。最高の青空の下で、最高の写真を撮って、イベントの大成功をアピールしないといけない。そこで、オリンピック・ブルーとかAPECブルーなどと言われましたが、国際イベントのたびに空気の「形象工程」をやってきたわけです。

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