「HOT LIMIT」という楽曲とその衣装は、日本のテレビ文化の中で特別な記号になっている。強風にあおられながら、体の大部分を露出した奇抜な衣装で歌うミュージックビデオは、90年代の音楽シーンを代表する伝説的な映像の1つである。曲を知らない若い世代でも、あの衣装だけは見たことがあるという人もいるかもしれない。
ただ、単に衣装が派手なだけなら、これほど長く愛されることはなかっただろう。重要なのは、西川自身がその奇抜な衣装を嫌がるのではなく、むしろ自分から積極的にネタにしていたことだ。自分の衣装やパフォーマンスをネタとして消費されることを堂々と受け入れ、面白がる姿勢こそが、彼が長年にわたり支持されている根本的な理由である。
音楽業界では、アーティストが神秘性やカリスマ性を演出することが多い。本人の素顔をあまり見せず、楽曲やビジュアルによってイメージを作り出し、特別な存在として振る舞う歌手も多かった。
軽妙なトーク力も持ち合わせる
そんな中で、西川はデビュー当時からその逆の道を行っていた。音楽番組でも軽妙なトークを見せて、共演者から話を振られたら即座に面白おかしく言葉を返してみせた。ダウンタウンがMCを務める音楽番組「HEY!HEY!HEY! MUSIC CHAMP」では、彼らとの掛け合いを通して、その卓越した話術とリアクションの良さが広く知られるようになった。
小柄な体から発せられる圧倒的な声量、風を受けて歌う大げさな演出、独特すぎる衣装、味わい深いがどこかツッコミどころのある歌詞。アーティストとしての西川には、人々の心に引っかかる要素がいくつも存在していた。

