[Book Review 今週のラインナップ]
・『交通革命と日本 グローバル世界の成立と開国・開港』
・『サッカーと地政学 ゴールの先に世界が見える』
・『総力戦研究所の真実 歴史の法廷に立つNHK』
評者・東京女子大学教授 酒井一臣
始まりは日本産石炭への需要 航路の歴史から国際社会を見る
ホルムズ海峡の封鎖によるタンカーの不通は、私たちの生活を直撃した。目を見はる技術革新が進む21世紀の現在でも、旧来の航路の存在が社会を支えていることを痛感させられた。
本書は、幕末から明治初期の航路開発による交通革命が日本にいかなる影響を与えたのかを論じたものだ。新撰組も薩長の志士たちもほとんど登場しない。本書に描かれるのは、開国によってグローバル経済に巻きこまれ躍動するヒト・モノ・カネであり、他律的だっただけではない日本の経済活動である。
まずモノとして重要だったのは石炭だ。日本に開国を求めたアメリカが欲しかったのは、日本産の良質な石炭だった。当時アジアの海を支配していたイギリスは各地に貯炭所を設けたが、遠隔地からの石炭輸送にはコストがかかった。太平洋を横断する航路を開発しようとしていたアメリカは、日本の貯炭所を切望した。日本の開国で、地球の東回りと西回りの航路が接続された。アジア海域を通る汽船には日本炭が必須になった。
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