授業についていけず「何がわかっていないか、すらわからなかった」ことが一番怖かったと振り返る。
「教室にいた周りの生徒はみんなついていけているように見える。授業も予定通り進んでいく。できなかった私のほうがおかしいのかなと。それがトラウマで、中学受験からも塾からも遠ざかりました」
塾に通っているのに「負債が溜まっていく」感覚
もう1人、東京大学後期教養学部3年のSさんは、Mさんとは対照的な経歴です。都内の都立中高一貫校出身で、小学生時代はZ会、大学受験期はとある塾の東大コースを受講。いわゆる「勝ち組ルート」を歩んできました。
「じゃあSさんは塾で伸びたんですね」と振ると、彼は少しだけ間を置いてからこう答えました。
「正直に言うと、自分は塾で伸びた側ではあるんですけど、なぜ伸びたかを言語化すると、塾の授業そのもの以外の要因の方が大きかったんです」
Sさんは、東大に特化したコースで体験したことをこう語ります。
「国語を伸ばしたくて塾に来る子は多いですが、講師の指摘を答案に反映する作業自体に国語力が必要なんです。だから国語が苦手な子ほど、通っても伸びない。授業レベルより一段下にいると内容を吸収できず、頑張るほど『負債』が溜まっていく感覚があるんです」
クラス分けテストについても、Sさんは続けます。
「上位の子は伸びる意欲を持てますが、20人中19位と言われる子は『無理だ』という認識が刷り込まれ、さらに悪化する。塾自体が二極化を再生産する装置になっているんです」
Mさんも頷きました。

