昨季、東京ヤクルトスワローズは勝率.419で、5シーズンぶりにセ・リーグの最下位に沈んだ。さらにオフにはチームの主砲・村上宗隆のメジャー移籍、キャプテン・山田哲人の負傷離脱などが重なり、今季も苦戦を予想する声が少なくなかった。
しかしその予想に反して、池山隆寛新監督のもとで、チームは快進撃を続けている。スター選手の不在を感じさせるどころか、むしろ若手が躍動し、チーム全体に活気が生まれている。
人事・人材領域の研究や、企業の組織変革・人材育成を支援してきたコンサルティングの経験からみると、高い成果を出す組織には共通点がある。それは、メンバーが自分の役割に意味を見いだし、「自分ならできる」「このチームならやれる」と感じながら、自律的に行動できる状態が作られていることである。
たとえ人事制度を整え、評価基準を明確にし、リーダーシップ研修を導入しても不十分である。リーダー自身の言動が不十分であれば、人はなかなか自律的に動かない。
では、池山監督のリーダーシップがどのようにして、若手や中堅の挑戦や活躍を引き出しているのか。
手掛かりは2つある。1つは、近年注目を集めるリーダーシップ論である「オーセンティックリーダーシップ」。もう1つは、「プロアクティブ行動」という自律・挑戦行動の概念である。
人事・組織に関する学術的知見と実務経験を踏まえながら、池山監督のリーダーシップを読み解き、企業組織における人とチームの力を引き出すヒントを探っていきたい。
現役時代の「ブンブン丸」と“地続き”の指導方法
オーセンティックリーダーシップとは、自分の価値観や信念に正直であり、言行に一貫性のあるリーダーシップを指す。自分自身を深く理解し、ありのままの姿勢で人と関わることを通じて、周囲からの信頼を獲得していくスタイルである。
この概念は2000年代に経営学で確立され、自己認識(自分の強み・弱み・価値観の理解)、関係的透明性(自分を率直に開示する)、内面化された道徳的視座(外圧でなく自らの規範に従う)、バランスのとれた情報処理(異なる意見も客観的に取り入れる)という4つの要素から成るとされる。
つまり、借り物の理論で武装するのではなく、「自分を知ること」を前提として、自身の原点をもとに発信することが、部下の信頼の源泉になるということだ。
池山監督には、まさにその姿が当てはまる。現役時代には豪快な打撃スタイルから「ブンブン丸」の愛称で親しまれ、指導者としても「フルスイングの精神」を説き、選手に失敗を恐れず挑戦させる環境づくりを貫いている。

