優勢な場面はもちろん、チームがピンチに陥った場面や選手が失敗した場面でも、笑顔で選手を鼓舞する姿がたびたびテレビに映し出される。スローガンとしてではなく、「失敗してもいいから挑戦すべきだ」という空気がベンチに漂っていることが画面からも伝わってくる。
現役時代のプレースタイルと、リーダーとしての指導方針が地続きだからこそ、コーチや選手は「この人の言うことなら信頼できる」と感じ、力を発揮しやすくなるのだろう。借り物ではない言葉は、それだけ深く相手に届くのだ。
「起用の意図」を選手一人ひとりに明確に伝える
では、その信頼は、どのようにしてチームの成果へとつながっていくのか。
ここで重要なのは、成果がリーダーの采配だけから生まれているのではなく、選手一人ひとりの挑戦的な行動の積み重ねによって生み出されているという視点である。信頼できるリーダーのもとで、選手が自分の役割に意味を見いだし、失敗を過度に恐れず、自ら考えて一歩を踏み出す。そうした行動が増えることで、チーム全体の活力や成果につながるのだ。
ここで補助線になるのが「プロアクティブ行動」である。これは「個人がとる自分自身や環境に影響を及ぼすような先見的な行動であり、未来志向で変革志向の行動」、つまりは組織に好影響を与える自律的な行動のことである。
日本総研では調査研究を重ねる中で、このプロアクティブ行動をとることが高い成果につながることを示した。加えて、プロアクティブ行動を押し上げる主要因の特定も実施した(下記画像参照)。本稿ではそのうちの「自己効力感」「集団的効力感」を取り上げたい。
まず自己効力感(「自分なら達成できる」という認知)。これを高める手段としては、「信頼する人からの説得・肯定」が有効だとされる。つまり、信頼されるリーダーが発する「君ならできる」という言葉は説得力を持つということだ。
実際、今季のヤクルトでは、起用の意図を選手一人ひとりに明確に伝えていると言われる。強打者の定位置とされてきた3番や5番の打順に、必ずしも実績十分とは言えない若手・中堅を据えたり、8番に投手を置いたりといった采配も、奇をてらったものではなく、データと適性を踏まえた打線全体の最適解として、本人に説明されているという。信頼するリーダーから役割を明示されるからこそ、選手は安心して一歩を踏み出すことができるのではないか。
次に、集団的効力感(「自分たちのチームなら達成できる」という、チームレベルで共有された信念)である。調査では、これが個人とチーム双方のプロアクティブ行動へ有意に寄与していた。個人の自信だけでなく、「集団としての自信」が挑戦を生むということである。

