そこから時代を経て、寿司を含めた外食に対するニーズが「安さ」から「本物志向・高クオリティ」へとシフト。この流れを受けて、高付加価値型の「グルメ回転寿司モデル」として1998年に「すし銚子丸」が誕生した。
銚子丸がユニークなのは、単に良い商品を提供するにとどまらず、店舗を「劇場」と位置付けて、あの手この手でエンタメを提供していることである。
例えば、店舗運営においては「店長」のほか「座長」というポジションを設けている。店長が店舗運営の全てを仕切る“劇場の総監督”だとすれば、座長はさながら“主演役者”だ。他の飲食店における副店長ポジションで、握り場の責任者として味だけでなくおもてなし体験もリードする存在に位置付けている。
この他、寿司に勝るとも劣らない名物メニューである店舗で焼き上げる「自家製玉子焼き」や、平日に無料となるあら汁など料理全般を統括する「料理長」に加え、ホールのリーダーとしては「女将さん」というポジションもある。各店舗では裏口である従業員用の出入り口に「劇団員専用入口」という張り紙もしているほどの徹底ぶりだ。
こうした独特の店舗設計は、2003年から始めた。きっかけは2つある。一つは、創業者がアメリカを訪問した際に高級百貨店「ノードストローム」で体験したおもてなしだ。
ノードストロームは「顧客第一主義」を掲げ、服と靴しか販売していない店舗に顧客がタイヤを返品しに来た際、それでも返金したという“逸話”があるほどのチェーンである。ここで体験したスタッフの対応に感銘を受け、接客やサービスの重要性にあらためて気付いたとともに、同時期に顧客アンケートで「銚子丸に入店すると、まるで舞台を観に来たような感じを受けました」という言葉があったことから、これまでにない付加価値として店舗の劇場化を進めていった。
「シャリ炊き3年」の常識を破る職人育成術
劇場化、エンタメ体験として2000年代には「水槽パフォーマンス」も始めた。店内に設置した水槽で泳いでいるタイやヒラメといった活魚を職人が網ですくいあげ、客の前でさばき、おろしたて・握りたての寿司を提供するパフォーマンスだ。

