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「乱世とは志高く新しいものを生み出せる時代である」守屋淳×田久保善彦対談(前編)明治実業家に学ぶ変化の乗り越え方

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今以上の乱世を生き抜いた明治の実業家から何を学ぶべきか。守屋淳氏と田久保善彦氏が語り合った(撮影:尾形文繁)
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守屋:それで思い出した例があります。私は企業研修で『貞観政要』を取り上げて、諫言の話をするとき、最後に「無理に諫言するのはやめましょう」と付け加えるんです。社長にダメなところを指摘したら、飛ばされてしまった社長候補を2人知っているからです。ところがある時、「私はその考え方に反対です」と言う受講生がいました。自分が上の人間に諫言しないのに、下の人間から自分に諫言せよというのは通用しないからだと。立派な方がいるな、と本当に感心しましたが、同時に、諫言しても飛ばされては会社にとっても本人にとっても意味がないので、「自分の身を守ることと両立してくださいね」とお伝えしました。こうしたトレードオフをいかに両立するかが、中国古典の大きなテーマの一つですね。

田久保:明治維新では、封建社会が崩壊し、武士の方には受け止めきれないことが起こりました。そこでうまく折り合いをつけていくのは、当時の人の胆識や見識だと思います。それはどうやって養われたと思われますか。

田久保善彦。慶應義塾大学理工学部卒業、学士(工学)、修士(工学)、博士(学術)。スイスIMDPEDコース修了。株式会社三菱総合研究所を経て、現在グロービス経営大学院 特任副学長 教授。藤田医科大学 医学部 客員教授。大和大学特任教授。複数の上場企業、スタートアップ企業社外取締役、顧問、社団法人理事、財団法人評議員等も務める。元経済同友会幹事。著書に『ビジネス数字力を鍛える』、『社内を動かす力』(ダイヤモンド社)、共著に『志を育てる(増補改訂版)』、『グロービス流 キャリアをつくる技術と戦略』、『創業三〇〇年の長寿企業はなぜ栄え続けるのか』、『ファミリービジネスの教科書』(東洋経済新報社)、他多数(撮影:尾形文繁)

守屋:渋沢財団の学芸員が見学者から「渋沢栄一の学歴は?」と質問されて、「何もありません」と答えたそうです。そのとおりで、本で取り上げた人物はみんな現代的な意味での学歴はないけれども、その多くが中国古典的なものを学んできた。その中核にあるのが、田久保さんがご専門の「志」です。どのような激動の時代でも、最終的に「自分はこうしたい」「社会をこうしたい」というポイントを目指して進めていく。かつ、それが多くの人に共有されるものであれば、協力者がいくらでも出てくるのだと思います。

自分の成長と後進の育成という葛藤

田久保:守屋先生の本を読んで一番印象に残った人物が大倉喜八郎です。自分の能力の限界にチャレンジすることにフォーカスしたが故に、結果的に周りの人が育たず、いろいろなものが失われた。それはそれで起業家の1つの志の貫き方ですが、すごく心配なこともあります。今、多くの日本の経営者はよく「後継者が心配だ」とおっしゃいます。渋沢栄一や岩崎弥太郎のように自分の後に続く人を真剣に育てないと、いずれ尻すぼみになる。そこが大倉喜八郎の例と重なりました。

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