守屋:この本で取り上げた実業家の中で、ビジネスをうまく発展させた象徴が三菱、三井、住友、森村財閥です。三菱は突然の代替わりで、弟の岩崎弥之助や周囲の幹部が頑張ったから発展しました。逆に、早めの代替わりを徹底させていたのが住友で、伊庭貞剛は「事業の発達に最も害するものは、青年の過失ではなくて、老人の跋扈である」と言って、57歳で引退してしまうのです。ここは高齢の経営者にぜひ読んでいただきたい部分です。若い人たちを評価して、次の時代を作るのは君たちだという気持ちをどこまで持てるか。それは、自分は死ぬ直前まで成長し続けたいという気持ちと相反するところがあるので、そのバランスの取り方の問題になりますよね。
本人の自覚と周囲から見た感覚が乖離することも
田久保:いわゆる老害を防ぐうえで、定年制は割と良いルールではないかと最近、思っています。定年を見据えて準備もできるし、誰かに後ろ指を指されることもなく終われますよね。
守屋:その一方で、後継者がルールを守るとは限らないという問題も出てきます。ある企業では、社長が親会社も子会社も例外なく、社長や役員の定年制を導入したのですが、その後継者が定年を超えても居座り続けてしまい、他の人の定年もすべてなし崩しという例があったりします。個人としてのすごさは、本人の自覚と周囲から見た感覚はどんどん乖離するので、それを誰かが知らせてあげないといけないのですが、なかなかできない。これはつくづく根の深い問題だと思います。
(構成:渡部典子)


