田久保:いろいろ調べてみると、失敗との向き合い方が大きなポイントだと思います。失敗しても、それを受け止めて許容される風土なのか。それとも、「だから、新規事業はダメなんだ」と叩かれる風土なのか。
それから、その後のキャリアも重要です。たとえば、私の知り合いは、あるIT系の企業の社内ベンチャー制度で2度失敗した後、今は3社目に挑んでいます。みんなはそれを見て、本気でチャレンジすれば次の機会がある会社だと信じるようになります。逆に、失敗したらアウトだと感じれば、みんな手を出さなくなります。
守屋:キヤノン電子の名誉会長の酒巻久さんは社長時代に、一般社員が「これをやりたい」と提案してきた場合に拒否する権限を課長から取り上げたそうです。失敗しても、絶対に会社はつぶれないから、とにかく経験を積ませようと考えたのです。それは、会社自体がチャレンジを許容するというシグナルにもなっていたということですね。失敗しても提案し続けて、どこかで成功すれば、すごく評価されるし、会社のためにもなる。そうやって鍛えられた人間を作ろうとした。うまいやり方ですが、それは社長に胆力があっての話ですね。
渋沢栄一の成功確率は95%!?
田久保:守屋先生の本は明治時代のアントレプレナーを取り上げていますが、渋沢栄一は会社を100や200も作っていますよね。そのうち何社ぐらい失敗しているのでしょうか。
守屋:実業面の渋沢栄一研究の第一人者である島田昌和先生によると、関わったりしたけれども成立しなかった事業と、5年以内につぶれた会社を合わせると、全体の5%くらいだそうです。
田久保:95%は成功しているんですね。
守屋:逆に言うと、そういう姿を示し続けたこと、あるいは、社長としてその意思決定を見せ続けたこと自体が、チャレンジする人の応援になったような気がします。
田久保:以前、ある会社で3階層に研修をしたときに、本当に強く感じたのは、階層を超えて参加者の思考方法がそっくりだったことです。子どもが親の思考方法と似るかのごとく、下の層は中間層を、中間層は上の層を見ているからでしょう。反対に、トップや部長がいくら「新しいアイデアを出せ」と言っても、自分自身が新しいことを言わなければ、部下も言いませんよね。


