今年の賃上げも堅調な結果になりそうだ。
連合調査における2026年の賃上げ率(第6回集計)は5.02%と25年の5.26%からやや鈍化するが、依然として高い水準だ。アメリカによる関税措置やイラン情勢悪化がダウンサイド要因として指摘されつつも、企業の賃上げ意欲は依然として底堅さがある。人手不足環境の中で人材のつなぎ止め、新規獲得が重要な経営課題となっていることの表れだろう。
一方、ここ数年で賃上げは定着しつつあるが、しばしば聞かれるのは「賃上げ実感が薄い」との声である。
最もわかりやすい理由は、物価が賃金以上に上がっていることだ。22~25年度の実質賃金は4年連続でマイナスとなっており、連合が26年4月に調査した「勤労者短観」では「物価上昇に賃金の上昇が追い付かない」と回答した割合が6割に上ったという。
ブレの大きい毎勤統計は「共通事業所」系列を参照
足元では、その実質賃金もプラス圏に浮上しつつある。
厚生労働省の毎月勤労統計における26年入り後の実質賃金は1月0.7%、2月2.0%、3月1.4%、4月2.0%と4カ月連続のプラスである。長らく物価上昇に賃金の伸びが追い付かず、実質賃金のマイナスが続いてきたことを踏まえれば、これは家計環境の改善を示す明るい材料であろう。
ただし、「実質賃金+2%」という高い伸び率は割り引いて考えた方がいい。毎月勤労統計はサンプリング・ローテーション(調査対象の入れ替え)などの影響で、しばしば賃金伸び率に不自然な変動が生じることが知られている。
このため、日本銀行を含め、多くのエコノミストが参照するのはサンプル要因を緩和するために作成されている「共通事業所ベース」の数字だ。これは前年同月と当月の双方で回答している同一事業所を比較する系列であり、調査対象の入れ替えによる歪みを小さくできる。
図は、実質賃金(前年比)の推移を、名目の所定内給与(本系列・共通事業所ベース)と重ねて示したものである。26年入り後の実質賃金は確かにプラス圏に浮上したが、その背後で名目の所定内給与をみると、本系列が3%台後半まで振れる一方、共通事業所ベースは2%台半ばにとどまる。両者には1ポイント前後の差がある。
ただし、共通事業所ベースでも統計上のクセが完全に消えるわけではない。共通事業所として集計される対象自体が変わるので、そこで伸び率の断層は発生しうる。本系列よりはクセの問題は緩和されるが、共通事業所系列でもなお本当に賃金実勢を示しているのか?という疑念は残るのだ。
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