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円安は日本経済にとってプラスかマイナスか? 目立つのは「悪いJカーブ効果」、製造業の国内回帰は限定的

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1ドル162円の為替介入防衛ラインが近づく(写真:梅谷秀司)
  • 末廣 徹 大和証券 チーフエコノミスト
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INDEX

為替相場の変動が実体経済に与える影響を評価する上で、最も重要な概念とも言える1つが「Jカーブ効果」である。

一般に、自国通貨の減価(円安)は、短期的には輸入価格の上昇を通じて交易条件を悪化させ、純輸出(名目)を押し下げる。しかし、その後は価格競争力の改善を背景に輸出数量が増加することで純輸出(実質、名目)が改善に向かい、結果として経済成長を押し上げるとされる。この経路がアルファベットの「J」の形状に類似することから、Jカーブ効果と呼ばれてきた。

この枠組みに基づけば、円安は時間差を伴いながらも最終的にはプラスに作用するとの見方が成立する。しかし、このメカニズムが成立するためには、輸出数量が為替変動に対して十分に弾力的であることが前提となる。

すなわち、生産体制や供給能力が柔軟であり、価格低下に応じて輸出が迅速に拡大できる構造であることが必要である。

問題は、この前提が現代の日本経済において成立しているかという点である。企業のグローバル展開や国内の供給制約の強まりを踏まえれば、従来型のJカーブ効果がそのまま発現するとは限らない。

最近のJカーブ効果は「悪いJカーブ効果」か

近年の日本経済を観察すると、円安局面にもかかわらず輸出数量の顕著な増加が確認されていない点が特徴的である。一方で、輸出から輸入を差し引いた純輸出(名目)は改善している。この乖離は、従来型のJカーブ効果とは異なるメカニズムが働いている可能性を示唆している。

具体的には、純輸出の改善は輸出数量の増加によるものではなく、輸入数量の抑制による側面が強い。実質賃金の低迷を背景とした内需の弱さが実質輸入を押し下げている。

この結果、純輸出は改善しているものの、その主因は輸出拡大ではなく、内需低迷に伴う輸入減少である。

このような構図は、従来想定されてきた「好ましいJカーブ効果」とは性質が異なる。輸出拡大による成長押し上げではなく、輸入抑制による受動的な改善であるためである。筆者はこれを「悪いJカーブ効果」と呼んできた。

過去コラム:円安がこんなに続くのは「日本経済が縮んだ」から 貿易収支が改善したのは「悪いJカーブ効果」(2024年7月18日)

23年度の円安ショック後は、「悪いJカーブ効果」が目立つ

ドル円相場の前年比変化を確認すると、23年度において円安の進行が最も顕著であり、この局面は実質的な「円安ショック」と評価できる。その後も円安圧力は継続しているが、変化率の観点から見ればショックのピークはこの時期であった。

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