彼らは北京に駐在していたという共通点があり、行先はすぐに、ある東北料理店に決まった。「日本人の間で」有名な店だ。
その集まりに1人だけ中国人が混ざっていた。参加した日本人の妻で、上海出身。彼ら夫婦はかなり盛り上がっていたところに遅れて到着した。妻は私の隣に座り、その隣に夫が座った。その夫婦がきたので追加で2〜3品注文することになったのだが、その妻が夫に向かって、ちょっと不機嫌そうに小声で「ねえ、なんでこの店に決めたの? 池袋ならほかにも美味しい店はたくさんあるのに……」と言ったのだ。
私はとてもびっくりした。その店は日本人の元中国駐在経験者も足繁く通う人気の店だ。日本人の感覚では「ガチ」であり「ディープ」な店だった。
だが、その上海出身の妻はグルメで、いつも美味しい中華料理の食べ歩きをして中国のSNSに投稿している人。そのため、余計に驚いた。
店にいる顧客の半数以上は「ちょっと中国通」な感じの日本人だった
私は思い切ってその妻に「池袋では、いつもどの店に食べに行っているの?」と聞いてみた。すると、私も耳にしたことはあるものの、まだ1度も行ったことがない店名をいくつか挙げた。
そのとき、私ははっきりと悟った。中国人が行く店と日本人が行く店は違うのだ、ということを!
もちろん、その女性がもし東北地方の出身者だったら、その店の味が口に合った可能性もある。だが、ふと冷静になって店内をよく見渡してみると、店にいる顧客の半数以上は日本人、しかも、「ちょっと中国通」な感じの日本人だったのだ。
その女性がいつも行く店は中国人客が8割以上だそうだ。つまり、出身地や味の好みの違いというだけでなく、日本人と中国人が行く店には、ほかに「ある大きな違い」があることに気づいた。それは、在日中国人コミュニティと、日本人コミュニティの情報網は大きく異なる、ということだ。


