他方レアアースの最大の生産国で、トリウムの蓄積量が膨大となっている中国がトリウムをエネルギー源として捉え、知財のすべてを保有しようとしてトリウム溶融塩炉を開発している経緯と狙いは「中国・レアース独り勝ちへの布石」で示したので見てほしい。
なお、インドもIMSBR(Indian Molten Salt Breeder Reactor)と呼ぶ、独自の溶融塩増殖炉をインドのバーバ原子力研究センター(BARC)で開発を進めている。第3段階のトリウム利用をより効率的に進めうると考えているためだ。2013年1月9日から11日にかけてインドで初めて開催された溶融塩炉の会合には筆者も参加し、超小型トリウム溶融塩炉「UNOMI」(ゆのみ)について講演した。オーストラリアとアメリカの動向は今後触れてみたい。
デンマークのトリウム関連企業2社に注目
冒頭で触れたグリーンランドはデンマーク領だ。デンマークの首都コペンハーゲンに、小さなスタートアップが2つある。その名もコペンハーゲン・アトミクス、もう1つはソルトフォス・エナジーだ。
ソルトフォス・エナジーは2025年4月に社名をシーボーグ・テクノロジーズから変更した。シーボーグは加速器による超ウラン元素の合成で知られるノーベル化学賞を受賞したアメリカの科学者、グレン・シーボーグの名前だ。
前者は社名からわかるように原子力に関係する企業だ。後者の社名にはソルトが含まれる。ソルトとは溶融塩のことだ。両者とも溶融塩炉という原子炉の開発メーカーだ。ともにトリウムの利用を目指している。前者は積極的に、後者は将来のオプションとしてだ。
もともとは使用済み核燃料の溶融塩炉での焼却を目指す同一の会社だったが、設計方針の違いに沿って別れることを決めた。スタートアップとは言っても、昨今のブームに乗って設立されたわけではなく、2014年から活動を続けている。
長年、原子力には距離をおいてきた同国であるが、25年末、国会議員らによって「原子力発電アライアンス」が設立された。そのデンマークにトリウム利用を目指す企業があることは単なる偶然だろうか。
グリーンランドのレアアース資源を活用するとトリウムは発生する。本稿だけを見れば「トリウムは有用なエネルギー資源ではないか」と思う読者もおられるかもしれない。その通りである。しかし、使用しなければ採掘・製錬の現場では環境汚染を引き起こす放射性物質であることを忘れてはならない。
レアアースの利用者である日本がそのトリウムに対して目をつむるならば、生じている問題を直視せず、有効な解決策も見出せず、他者に課題の解決を押し付ける国だと見られかねない。

