一方、中学校・高校は、学校教育の「出口」に近い存在として、より社会生活や職業生活を意識し、「使える」学力を育んでいかなくてはなりません。しかし現状は、先生が一方的に教え続ける、講義中心の授業にとどまっており、「使える」学力を育むために重要な「知識をアウトプットする機会」が十分に確保されているとは言えない状況にあります。
★ 最終目的は「2つの最重要課題」(動機付けと転移)を解決すること
★ 「活動」をめぐって、小学校と中学校・高校で、それぞれ異なる問題(活動の質と量の問題)が生じている
カギは「統合的な理解」と「総合的な発揮」
そして、この問題を改善するための「カギ」として、次期学習指導要領に掲げられようとしているのが、先ほど紹介した「学力のレベルと学習指導要領(次期)」の図に記載した「(知識及び技能に関する)統合的な理解」と「(思考力、判断力、表現力等の)総合的な発揮」です。なぜこれが「カギ」になるのでしょうか。
◎学力のレベルと学習指導要領(次期)【再掲】
まず、上の図の右端を見てください。学習指導要領の記載ぶりは、対応する学力のレベルが上がれば上がるほど、一般的・抽象的なものになっていきます。例えば、算数における「見方・考え方」は、次のような内容です。
どうでしょう? これと、具体的な内容、例えば「分数のかけ算」や「素数」を結び付けて、日々の授業に落とし込むことができそうでしょうか? 簡単ではないことがイメージできると思います。つまり、「見方・考え方」には、「内容が一般的・抽象的すぎて、日々の授業の改善に活かすことができない」という課題があったのです。
そこで今回、「見方・考え方」と「日々の授業」をつなぐ「架け橋」として、「統合的な理解・総合的な発揮」が設けられることとなりました。しかし、改めて先ほどの図をご覧いただいて、少し疑問が生まれてきませんか? それは、
「そんなに大事なのに、何で評価の対象外なの?」
「単元の目標と一緒にした方が、シンプルになるのでは?」
という疑問です。
ここで、小学校の課題を思い出してください。小学校では、前回改訂以降、「基礎的な内容の定着がおろそかになっている」という課題がありました。「評価の対象」というのは、テストで出題される問題であり、それに基づいて子どもたちの成績が付けられるものですから、授業の進め方にも大きな影響力を持ちます。
上記のような課題が生じているにもかかわらず、評価の対象となる「単元目標」のレベルと抽象度を上げてしまった場合、どうなるでしょうか。おそらくは、さらに集団での活動を増やす方に流れ、基礎的な内容の定着が一層不十分になってしまう恐れがあるのではないでしょうか。
改めて言いますが、目指すべきは「試合で活躍できる力」を育むことです。しかし、試合で活躍できない場合、単にミニゲームを繰り返しているだけでは、力は付きません。大切なのは、パスやドリブルの基礎練習、勉強で言えば、基礎・基本の定着に向けて、一人で考え、問題を解く時間と、試合などでの実践経験のバランスです。次期学習指導要領の構成は、そのようなバランスを取るためのものだと言えるでしょう。
なお、ここまで読まれて、「小学校はわかったけど、逆に今もドリブル練習やパス練習ばかりにとどまっている中学校や高校については、レベルを引き上げていくため、『統合的な理解・総合的な発揮』を評価対象に位置付けてもいいのでは?」と思われた方もいるかもしれません。
それについては、実は僕もそう思っています。ただ、そうなると、学習指導要領の構成が学校段階で異なることになりますので、より内容が複雑になります。そうしたメリット・デメリットを踏まえ、どのような整理とするかは、今後の議論に委ねたいと思います。
★ 「見方・考え方」と「日々の授業」をつなぐ「架け橋」として、「統合的な理解・総合的な発揮」が設けられようとしている
★ 学力のレベルを引き上げていくことを目指しつつ、小学校の課題も踏まえ、「統合的な理解・総合的な発揮」は評価対象としない
以上がざっくりとした解説です。そうそう、最後に、ある意味では一番大切なことを。文科省に「お願い」です。
初めの方に書いた「学校現場に『余白』を生み出すため、『教える内容』を精選すること」、これは絶対に実現していただきたい。これまで記載してきた、次期学習指導要領に込めた「願い」が実現するかどうか、それは、ここにかかっていると思います。「教科書を端から端まで教えることにこだわるな」と言われても、それは学校現場にとって無理な相談です。
改訂の議論もいよいよ大詰め。ポイントを絞った「薄い教科書」が学校現場に届くよう、「最強メンバー」のチームに期待しています。




