だが、NASAの技術者らは、地球上の実験室では完全な宇宙環境を再現して流体力学のシミュレーション行うことが困難であるため、トイレの開発においてそれが最初から「完璧なものになることはまずない」としている。
UWMSは、ISSに搭載されているバージョンでも何度か故障を起こしている。2021年に設置が完了したISS版UWMSでは、設置時の動作実証試験で吸引ファンが動作しなかった。この問題は、ファンの駆動装置を交換することで解決されたため、原因は駆動装置の初期不良だったことがわかった。
また、2008年にはロシア・ズヴェズダモジュールに設置されているトイレで、7年間使われてきたポンプが故障した。このケースでは、今回のオリオン宇宙船と同様に、固形物の処理は問題ないにもかかわらず、液体の処理が不能となり、飛行士たちは必要に応じて排泄用の袋を使用しなければならなかった。
この問題では、交換用ポンプをロシアから外交ポーチで受け取ったNASAが、それをSTS-124ミッションでISSへ向かうスペースシャトル・ディスカバリー号に補給物資とともに積み込んで送り届け、やっと修理を実施できた。
トイレは避けて通れない
有人宇宙飛行において、生理現象である排泄への対応はどうしても避けられない課題だ。
宇宙船内にトイレがなかった時代は、排泄物を入れる袋にも問題が発生することが多かった。1965年のジェミニ7号では、固形物の袋に入れた薬剤がきちんと攪拌されていなかったのか、しばらく経ってから袋が膨張・破裂して中身が船内に飛び散ってしまった。このミッションのパイロットだったジム・ラヴェル飛行士(後のアポロ13号のコマンダー)は帰還後、メディアの質問に対し「君は、トイレの中で一週間過ごしたことがあるか」と述べたという。
アポロ計画時代にも船内に固形物が漂うトラブルが発生しており、飛行士たちのなかには、排泄回数を減らすためにミッション中の食事量を大きく減らす者もいた。

