コック氏から報告を受けたNASAの地上管制チームは、飛行士らに対しいったんトイレの使用禁止を指示した。そして報告された状況内容と、トイレの設計資料から状況を分析した結果、問題はトイレのファンを制御する電子機器と、液体を蓄える容器につながるバルブに不具合があったことを突き止め、コック氏にその修理方法を指示した。打ち上げから約4時間後、コック氏が無事に修理を終えたことで、この問題は解決した。
ピンチ再び
その後、オリオン宇宙船は順調に月への道のりを進んでいた。ところが、宇宙船が地球から約32万km離れた位置に到達したミッション4日目、NASAの管制チームは再びトイレの問題について報告を受けた。今度は、固形物の処理には問題がなかったが、液体の方の処理ができなくなったのだという。
固形物の処理に問題がないことから、管制チームはトイレそのものには問題がないと判断。たまった液体が処理できないのは、船外に排出する配管のどこかで詰まりが発生している可能性が高いと判断した。そしておそらくは、ベントシステムの排出口が日光の当たらない側にあるため、液体が配管内で凍結してしまったと考えられた。
そこで、飛行士らはベントラインをヒーターで暖めたり、排出口に日光が当たるように宇宙船の姿勢を変え、暖まったところで船外への液体排出を試みた。ところが、それでも状況は改善しなかった。
NASAはさらに起こりうる問題を検討した。そして新たな可能性として、液体の排出前に添加する薬剤によってスラッジ状の物質が精製され、配管内のフィルターを詰まらせてしまった可能性もあるとした。この薬剤は、液体に発生する微生物がバイオフィルム(細菌が集まって作る粘性の膜のようなもの)の形成を抑える目的で添加するものであるため、もしそれが逆に配管を詰まらせていたのだとしたら、皮肉な話と言うほかない。
ただ、この仮説の正否を検証するには、実際にその配管を分解して中身を確認する必要がある。したがってオリオン宇宙船が帰還してからでなければ確認できないと、アルテミス2号の飛行責任者であるリック・ヘンフリング氏はミッション中の記者会見で述べた。

