筆者は「今の制度では保険適用外です」と説明するしかありませんでした。すると患者さんは苦笑いをしながら、「もっと太るか、本当に糖尿病になるまで待つしかないんですね」と言って帰られました。この言葉が忘れられません。
副作用について危険視する声もあるでしょう。確かに、簡易的なオンライン診療できちんと説明せず、患者さんに使用を任せてしまうような場合では、そのリスクは否めないと思います。しかし、GLP-1薬に詳しい医師が患者さんをしっかりフォローし、二人三脚で治療を進めていくのであれば、過度に恐れる必要はないと考えています。
大切なのは、吐き気や嘔吐などの消化器症状、まれに起こりうる胆のう疾患など、GLP-1薬特有の副作用や注意点について、患者さんにも治療前に十分理解していただき、治療中も定期的に経過を確認しながら進めていくことです。
そうした適切な管理のもとであれば、多くの場合、安全に治療を継続することが可能です。
相談に来る更年期の女性
日本でGLP-1薬というと、若い女性の美容目的が話題になりがちです。ところが、実際の外来で相談を受けるのは、それとは少し違う患者さんたちです。その代表が、更年期を迎えた女性です。
閉経前後には女性ホルモンの変化によって内臓脂肪が増えやすくなり、高血圧、脂質異常症、インスリン抵抗性、脂肪肝、心血管疾患などのリスクが上昇することが知られています。近年の研究でも、更年期は体重増加と心血管疾患や糖尿病のリスクが高まる重要な時期であることが示されています。
本来であれば、そういう更年期の女性こそ、GLP-1薬の恩恵を受ける可能性がある方々です。しかし彼女たちには届かない。美容目的では使われるのに、あらがえないホルモン変化に悩みを抱えながら、「年齢のせいだから仕方ない」と我慢している女性たちが使えないのはなぜ?という疑問が、どうしても湧いてしまうのです。
このほかにも日本では、「マンジャロって高いですよね」「医者が儲けているんでしょう?」と言われることがよくあります。

