2013年、アメリカ医師会(AMA)が肥満を正式に「病気」と認定しました。肥満は単なる見た目の問題ではなく、糖尿病、心血管疾患、慢性腎臓病、脂肪肝などにつながる慢性疾患として考えられるようになったのです。そしてGLP-1薬の登場によって、その理解はさらに深まりました。
以前は、減量というと「食べる量を減らしましょう」「運動を頑張りましょう」という話が中心でした。しかし今は、「なぜ食欲が強くなるのか」「なぜ体重維持が難しいのか」という視点で考えられるようになっているのです。
実際、脳、遺伝、ホルモン、睡眠、ストレス、生活環境など、研究が進むにつれ、体重は意志力だけでは説明できないことがわかってきました。
日本と大きく違うのは、アメリカでは「健康的な生活を送ること自体が、誰にでも平等に与えられているわけではない」という考え方が重視されているという点です。
経済格差が大きく、仕事の後にジムへ通える人もいれば、夜勤や子育て、複数の仕事を掛け持ちしながら生活している人もいます。低所得層ほど肥満率が高いことも知られています。健康的な食材へのアクセスや運動環境には大きな差があり、「何を食べるか」は必ずしも個人の意志だけで決まるものではありません。同じ体重の問題を抱えていても、その背景は1人ひとり異なります。
そのため、近年は「肥満は自己責任か」という議論から、「どうすれば誰もが健康になれる環境を作れるのか」という議論へと少しずつ変わり始めているのです。
「痩身」から「病気予防」へ
今では「体重を減らしたい」という理由だけではなく、「心筋梗塞で倒れたくない」「腎臓を守りたい」「健康寿命を延ばしたい」という理由で、GLP-1薬を使い始める人も増えています。
大きな転機となったのが、2023年に発表されたSELECT試験です。
1万8000人弱を対象としたこの大規模試験では、GLP-1薬の1つであるウゴービが心血管死のリスクや、心筋梗塞、脳卒中の発症リスクを20%低下させることが示されました。しかも、対象者は糖尿病患者ではありませんでした。

