駅と街の間に人の動線が生まれたことで、文化と商いの循環が始まっている。それは、画一的なチェーン店のような展開ではなく、各駅のキャラクターやストーリーに合わせた店づくりを徹底していることにもよる。
例えば、能美の広見製麺所やスミヤ精肉店といった地域に根差した企業・店舗との連携。さらに、輪島で「タコ天」を作っていた90代の職人が廃業を決めた際、その機械や製法を受け継ぎ能美根上55食堂で提供することで、事業と食文化の継承もした。また、ブータンの貧困地域にソバの生産を委託し、フェアトレードで輸入。日本では質の高い蕎麦を提供し、現地では収入の倍増や教育環境の改善に寄与するという、国境を越えた共生モデルも確立している。
「ごちゃまぜ」が生む、新しくやさしい地域のコミュニティ
駅周辺の活性化は、ハード面の課題解決にも波及している。小松駅周辺に増えている空き家をシェアハウスへと転換する取り組みだ。2024年には「KABULET HOUSE 1」、2026年には「2」が開設され、各5人が入居している。
ここに暮らすのは、ミャンマー、インドネシアなどから来日した留学生。彼らは午前中に福祉の現場などでアルバイトとして経験を積み、午後から専門学校で日本語や介護・福祉を学ぶ。学業と仕事と生活環境を整えることで、将来的に日本で福祉職として活躍する動機づけともなり、地域の空き家問題も解消する。
障がい者、認知症の高齢者、子育て世帯、学生、外国人留学生など、属性も国籍も異なる多様な人々が集う、佛子園が掲げる「ごちゃまぜ」の居場所づくり。それが駅という公共空間を舞台に展開されることで、相互理解が深まり、誰もが生きやすい社会の創造につながっていく。美川駅で起きた利用者増という現象は、駅が単に「電車に乗る場所」から、地域社会の課題を解決し、人々の暮らしを豊かにする「磁場」へと進化した証左だ。
全国各地で抱える同様の現象や問題を解決するヒントと先例を、ここに見たように思う。

