その後、事態はさらにエスカレートした。ソウル警察のサイバー犯罪課が捜査に乗り出してきた。韓国の警察を甘く見てはいけない。過去にGoogleが捜査対象となったとき、Googleの韓国支社長は国外脱出を余儀なくされた。
それでもFacebookは頑なに無視を続け、韓国政府も韓国警察もFacebookに対して何の権限も持っていないと主張しているらしい。アメリカとアイルランド(Facebookの国際本社がある)以外の国々に対し、一貫してそのスタンスを取ってきているようだ。
Facebookが掲げる“価値観”が優先という考え
Facebookを名指しで規制する法律や、管轄権を明確に定めた法律を整備していないかぎり、その国の政府にFacebookを規制する権限はないと主張する。
つまり、たとえば地方自治体がFacebook上に虚偽広告を発見して削除を求めても、ソーシャルメディア企業を対象として管轄権を定めた法律や、誤解を招く広告を禁じる明確な法律がその国に存在しないかぎり、Facebookは何ら対処しないということになる。Facebookアメリカ本社の経営陣は、自分たちが掲げる“価値観”が各国の法律と衝突した場合、“価値観”が優先されうると考えている。
韓国への対応に関して、私が腹立たしいと思うのはそこだ。韓国には、Facebookはゲームを当局の審査に出して承認を得なければならないという法律が現に存在するのに、Facebookはその事実を認めようとさえしない。事業を展開しようとしている国の政府や警察機関の権限を否定するなんて、正当化するのは無理だ。
しかも、Facebookに断固たる処置を執ろうとしているのは、韓国だけではない。ほかの国々も、さまざまな理由で調査を開始していた。ブラジル、韓国、インド、フランスで、Facebookの海外拠点が、武装と非武装を問わず、“訪問”や“強制捜査”の対象とされてきた。その情報が私の耳に入るのはたいがい、現地法人の責任者から電話やメールが来たときだ。(「もしもし? 銃を持った男が来てて、Facebookはいつブラジルで納税する予定かって訊いてるんだけど」)
似たようなことが頻繁に起きるようになってきたため、いまでは強制捜査の対処マニュアルを用意しているくらいだ。それにはFacebookのネットワークへのアクセス遮断も含まれている。言うまでもなく、Facebookのような“バーチャル国家”と、ブラジルや韓国のような“リアル国家”との決定的な違いは、後者には本物の武器を携帯した本物の警察がいることだ。
インドでは当局との摩擦が深刻で、Facebookでは元警察幹部を雇い、退屈で官僚的な肩書きを与えている。政策チームは、“逮捕される事態をうまく処理できる人物”ーーつまりインド政府と衝突した場合、“みんなの代わりに牢屋に行く人”と理解している。

