──染色体異常の子どもを持つ家族の葛藤を描いた代表作『運命の子』など、ルポルタージュを多く執筆されてきました。対して本書は、少し毛色が違います。
「小児外科学」という学問を広く一般に紹介したいと思った。「子どもの打撲や骨折を診てくれるのですね」と誤解されがちだが、内臓の病気を手術によって治療するのがわれわれの仕事だ。小児外科の魅力を、医師を志す若い人を含めてもっと知ってもらいたい。
動機はもう1つ。僕が大学の職を退いて19年経つが、その間、小児外科学はじりじりと進歩してきた。例えば、後述する「脊髄髄膜瘤」という難病では最近、胎児手術が可能になった。こうした進化を一から勉強し直し、自分の経験と合わせて1冊にまとめたのが本書だ。
──多くの希少疾患が登場します。
小児外科医は普段、鼠径ヘルニア(脱腸)の手術ばかりしている。ところが突然、希少な外科疾患の新生児が運び込まれてくることがある。何しろ症例の少ない疾患が多いから、その一例を大事にする。手術が行われる際には後輩医師たちは手術室に全員集合し、目に焼き付ける。本書ではとくにこうした希少疾患にフォーカスしている。
小児外科医になって2年目、初めて新生児の執刀を任された。生まれつき肛門がない「鎖肛」だった。肛門を作る根治手術をするには体が小さすぎるので、まずはお腹に人工肛門を作る。ガスがたまった大腸はパンパンに膨らみ、腸壁は薄く引き伸ばされている。あの緊張は忘れられない。
──赤ちゃんの手術は、大人とは違いますか。
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