実際、新規事業に関わった人たちの多くが「1年で5年分くらいの経験をした」と語ります。毎週のように仮説を立て直し、関係者と議論し、顧客と向き合う。その反応を受けてまた改善を重ねる。このスピード感と濃度は、既存事業や管理業務ではなかなか味わえないものです。
さらには、まったく異なる部署や業界の人と協働することで、それまでになかった知見や視点が得られ、自己の枠組みそのものが拡張されていく感覚を持つ人も少なくありません。
新規事業への挑戦は、このような「キャリアの多様化」の一環として捉えることができます。そこでは、意思決定、顧客対応、資金計画、プロダクト開発など、通常は部署横断で行われるような業務を一手に担うことになります。こうした経験は、将来的にどんな環境に身を置いたとしても、その人の「柔軟性」と「変化対応力」として確実に活きてくるでしょう。
キャリアに掛け算をもたらす
新規事業の担当になると、それまでの専門分野や実績から一時的に距離を置くことになります。例えば、営業職の人が企画側に回ったり、技術職の人が市場開拓に携わったりといった具合です。その結果、「自分の実績や強みが評価されなくなるのではないか」という懸念を抱くのは自然なことです。
しかし実際には、新規事業への挑戦はそれまでの専門性を無にするものではなく、「掛け算」をもたらします。例えば、営業出身者が顧客の声を踏まえて新しいプロダクトを企画したり、エンジニアが技術を活かして市場価値のあるソリューションを立ち上げたりと、過去の経験と新たな挑戦が融合することで、より高いレベルの価値創出が可能になります。
新規事業の現場では、個別スキルよりも「全体最適を考えながら動ける力」「巻き込み力」「先が見えない中で進み続ける粘り強さ」といった汎用的なスキルが強く求められます。これらは、どの部門に戻っても評価される普遍的な能力であり、キャリアの長期的成長に大きく貢献します。

