ここで登場したのが、地下鉄の運休区間で運行された代行バスだ。このタイミングを35度の熱波が襲った。
地下鉄の乗客をさばくために多数のバスがあちこちから集められて運行されたが、実はバスも基本的に冷房を設置していない。猛暑を想定して設計していないからだ。例えば2012年のロンドン五輪に合わせて登場した「ニュー・ルートマスター」はデザインこそ先進的なバスだが、窓の開口部は小さく、気温が上がるとエンジンが極端に熱くなるなど、高温の環境を前提とした設計ではない。
地下鉄運休でバスに集中した乗客は満員の車内に押し込められ、
予想外の気温上昇に対応追いつかず
これらは単純に「イギリスの交通機関は古い」「更新が遅れている」という問題ではない。前述のとおり、ピカデリー線では34億ポンド(約7280億円)規模の近代化計画が進行中であり、新型車両導入のためにさまざまな更新作業が進んでいる。
ロンドンでは長らく、地下鉄やバスに冷房がなくても問題がなかった。しかし気候変動によって、既存のインフラが耐えられないという状況にさしかかっているのだ。問題は単純な老朽化ではなく、予想外に高温化が進む気候に対してどう立ち向かうかの挑戦になりつつある。インフラの更新速度よりも気候の変化のほうが速い現状をどうするかが喫緊の課題だ。
