「いい先生」と聞いて、多くの人が思い浮かべるのは、生徒に対して熱心な先生ではないでしょうか。授業の準備に時間をかけ、悩んでいる生徒には放課後も残って話を聞く。かつて『3年B組金八先生』が描いたような、生徒の生活にまで踏み込んでいく教師像は、長らく学校現場の理想型として共有されてきました。
ところがいまの学校では、その「熱心さ」を素直に発揮することが、年々難しくなってきています。距離を縮めすぎれば咎められ、踏み込みすぎれば「行き過ぎ」と言われる。皮肉なことに、現場でもっとも消耗しているのは、かつての基準でいえば「いい先生」と呼ばれていたであろう人たちだったりします。
数字に表れる「静かな異常」
まず、現場で何が起きているのかを、数字から確認しておきます。
東京都教育委員会が実施した教職員アンケート(令和7年4月公表)では、過去5年間に「通常の社会通念から疑問と感じる行動や行為」を外部から受けたことがあると答えた教職員は22%にのぼりました。その相手として最も多かったのは保護者で、全体の88%を占めています(※1)。東京都が2025年4月に全国初の「カスタマー・ハラスメント防止条例」を施行し、学校現場にもこれを適用したのは、こうした実態が背景にあります。

