OECDが実施する国際教員指導環境調査(TALIS)2024では、「保護者の懸念への対処」にストレスを「かなり感じる」または「非常によく感じる」と答えた日本の教員は、小学校で58.7%、中学校で56.4%でした。前回調査と比較しても、保護者対応に関する日本の教員のストレスは小中学校ともに増加しており、国際平均を上回っていることが文部科学省の報告書で示されています(※2)。
文部科学省「令和5年度公立学校教職員の人事行政状況調査」では、精神疾患による病気休職者は7119人と過去最多を更新しました(※3)。教員不足が深刻化する裏側で、心を病んで現場を離れる教員が増え続けているのです。
これらの数字を並べると、ひとつの傾向が浮かび上がります。怒鳴り声をあげるような分かりやすいクレーマーが急増しているというよりも、「正論」や「子どものため」という衣をまとった要求が、教員の足元を静かに崩しているということです。
強い言葉での指導が、もう成立しない
かつての「熱血指導」を支えていたのは、強い言葉で生徒に踏み込む文化でした。「お前のためを思って言ってるんだ」と大きな声で叱り、時には涙ながらに語り合う。そうした関わりが教育の核にあると、長く信じられてきました。
しかし現在の学校では、強い言葉で生徒を指導することが、ほぼ封じられつつあります。「怒鳴られた」「威圧された」と一言クレームが入れば、たとえ指導内容が正論であっても、学校としては「今後は配慮します」と頭を下げざるをえません。指導の中身ではなく、生徒や保護者がそれを「どう感じたか」が、評価の最終的な基準になりつつあるからです。

