アンカー社自身も、過去には製品のリコールや、発火事故に伴う自主回収などを行った失敗の経験もあるが、同社ではそうした過去ともしっかりと向き合って2026年2月には「つくる」「つかう」「すてる」というライフサイクル全体でリチウムイオン電池搭載製品の安全性や品質を見直す包括的な取り組みを発表するなど、信頼性向上に努め、製品に対して責任を持つ姿勢でも業界をリードし始めている。
5月の新製品発表会「Anker Power Conference 2026」では、その「つくる」フェーズにおける新しい答えとして、新バッテリーセル「ネオリチウムイオンバッテリー」を投入。
新製品発表会の後、アンカー・ジャパン代表取締役CEOの猿渡歩氏に業界の動向や同社の戦略について話を聞いた。2014年の日本事業部門創設から参画し、同社が参入したほぼ全カテゴリーでオンラインシェア1位を実現するのを牽引してきた人物だ。話はバッテリー戦略の今後から、災害対応、ブランド再編まで多岐にわたった。
「セルがよければ安全」ではない──品質問題への向き合い方
猿渡氏の話に入る前に、業界全体の背景を整理しておきたい。リチウムイオン電池が発火しやすいことはアンカーが今回の取り組みを始めるはるか前から業界で指摘されていた。でも、だからこそ1991年頃にソニー・エナジー・テックが初めて商品化して以来、どのメーカーも事故が起きないように注意してきた。
それでも2013年にはボーイング社の787 ドリームライナー機体内で使用されていたバッテリーの発火事故があり、当時運用されていた全50機がしばらく運行停止になった。2016~2017年にはサムスンのGalaxy Note 7が発火する事故があり306万台がリコールされた。
ただ、そこまで発火事故は多くはなかった。最近、急速に事故が増加したことには複数の要因が絡んでいそうだ。
まずはそもそもモバイルバッテリーが一般化し利用者が増えたこと。また近年の大容量化(より小さく軽くを目指しながら、バッテリー容量を大きくしてきたこと)でよりエネルギー密度が高まったこと。そして、もう1つは、それに伴ってそれまで聞いたこともないメーカーによる無責任な粗悪製品が増えたこともありそうだ。
