高市首相自ら26年度補正予算案に関して説明した5月25日の記者会見で、中東情勢に対応するために追加する歳出3兆円にあわせて、特例公債を3兆円増発すると表明した。そしてすかさず、25年度分の特例公債のうち3兆円分を発行せずに済む見込みが立ったことから、国債発行予定額全体の中で調整して、補正予算を組んでも市中での26年度内の発行総額は増やさないようにできる、と強調した。
通常は、このような予算編成はしない。補正予算を編成する時期には、前年度の決算見込みが7月にほぼ固まっていて、歳計剰余金も見込みがついていて、それが補正予算の財源に使えるから国債を増発せずに済むというのが、通常の展開である。
しかし、26年度は6月に補正予算案を提出した。決算見込みが固まる7月よりも前である。だから、前年度の歳計剰余金がいくらになるかまだ確定できない。確定できない剰余金を前倒しで使うわけにはいかない。
ただ、大まかな金額で、税収の上振れ、税外収入の上振れ、歳出の不用が出てくることがわかり、それにより前年度の剰余金が出ることがわかり、その分だけ前年度の国債発行額を減らすことができる。国債発行額を減らしても決算が締められる。
前年度分を3兆円減らし、今年度を3兆円増やせばOK?
そもそも、特例公債の発行の根拠法である特例公債法(財源確保法)では、特例公債の発行は、当該各年度の翌年度の6月30日まで行うことができる、と規定されている。年度末は3月末だが、その後出納整理期間があって、その期間中の6月末までは前年度の歳入となる特例公債が、国債市場では見分けがつかない形(同一券面)で発行されている。
その前年度分の特例公債の発行額を3兆円ほど減らす代わりに、26年度の特例公債の発行額を3兆円増やして、26年度中に発行する国債の総額を増やさないようにする、という操作をしたわけである。
26年度補正予算で特例公債を3兆円増発するにもかかわらず、26年度内の国債発行総額を増やさないようにする。ここまでして、高市内閣が特例公債を増やさないように努めているとアピールしたいようだ。
積極財政というから、財政規律を度外視して国債を好きなだけ発行するのではないか、とただでさえ見られている。だから、そうではないことをわざわざ強調しないといけない立場に追い込まれているともいえる。
これは、消費税減税を行うとしても同様である。
消費税率1%にするなら年4.3兆円が必要
消費税減税を行うならば、飲食料品の税率を0%にするなら約5兆円、1%にするなら約4.3兆円の財源が必要となる。東洋経済オンラインの拙稿「『給付付き税額控除』の前に寄り道すれば『食料品消費税ゼロ不況』の最悪事態・・・買い控えの反動増なく、かえって物価高騰」でも触れたように、それだけの財源を確保するのは容易なことではない。
まさかこれを、一部でも特例公債に頼って実現しようとするのではあるまい。
国債金利は、すでに上昇し始めている。5月18日には、長期金利の指標である10年国債利回りが一時2.8%にまで上昇した。超長期国債でも、30年国債利回りが一時4.2%まで上昇し、過去最高水準を更新した。
