そのため、暴走した免疫を止める目的で、第1選択(ファーストライン)の治療には以下3つの方法が用いられるのが一般的だ。
…強力なステロイド薬を短期間で大量投与し、脳の炎症や免疫の暴走を抑える
…健康な人の血液から生成された「免疫のバランスを整える成分」を体内に注入し、異常な免疫反応を落ち着かせる
…患者の血液を一度体外に取り出し、脳を攻撃する抗体を含む血しょう部分だけを除去して、新しい液体に入れ替える
しかし、これらの治療を続けてもAさんの意識は戻らなかった。
そのため、医師は第2選択(セカンドライン)の治療としてAさんへの抗がん剤投与を家族に勧めた。しかしその治療に用いられる薬剤は、Aさんの妊娠機能にも影響する可能性のあるものだったという。
「妹は昔から“お母さんになるのが夢”って言っていたんです。だからせめて、子どもを産める体を残してあげたかった。でも、命がなければ何の意味もない。妹の夢を奪い取る選択をしなければならないのかと、家族全員で本当に苦しみました」
結局、Aさんの容体はその後も改善が見られず、ついに家族は抗がん剤投与を承諾した。その処置が始まろうとしていた2012年8月19日。
Aさんは突然、目を覚ました。
続く後編ー難病「抗NMDA受容体脳炎」後遺症と治療費で《元の人生には戻れない》絶望の淵にいた彼女が劇的な回復で"取り戻した人生"ーでは、昏睡状態から目覚めたAさんが劇的な回復を遂げ、新たな人生を歩みだす13年間の道のりを紹介する。
