要するに、マスクの人口減少パニックは白人文明の存続に対する懸念なのである。ヨーロッパやイギリスの極右政党に対する熱狂的な支持表明のなかで、マスクはそうした懸念をあからさまに語っている。「白人は世界人口のなかで急速に減少しているマイノリティだ」と2025年9月に投稿。また同じ月には、「出生率の低下は西洋にとって最大の脅威であり、それに僅差で続くのが移民である」とも投稿した。「このまま続けば西洋は存在しなくなるだろう」。問題はどれだけの人が子供を産んでいるかではなく、「どの人」が、「どこで」産んでいるかだった。
母国南アフリカで植え付けられた「白人ジェノサイド」という考え
この考え方は、マスクの母国である南アフリカに前例を見ることができる。アパルトヘイト時代の白人政治家たちは(黒人に)「飲み込まれる」ことを懸念し、白人の出生率を高めることで「ゆりかご競争」に勝とうとしたのだ。
2025年、マスクは南アフリカの黒人多数派によって引き起こされている「白人ジェノサイド」の被害者であると主張するオランダ系白人アフリカーナーの過激派をソーシャルメディアで拡散した。彼のプラットフォームを通じて広まったアフリカーナーの主張はアメリカの大統領執務室にまで届き、トランプは南アフリカのシリル・ラマポーザ大統領に対し、その反白人犯罪という捏造情報を突きつけて非難した。すでにアメリカの難民政策も路線変更がおこなわれているところだった。南アフリカから来るアフリカーナーの受け入れは許可される一方で、他の難民プログラムは凍結されたのである。
南アフリカにおいて、白人に関する「ジェノサイド」という言葉は、少なくとも1960年代から使われてきた――だがそれは移民による置き換えとは無関係であり、胎児を中絶する白人女性を非難するための言葉だった。こうした文脈のなかで、白人人口が縮小していくという見通しは「人種的自殺」の証拠として解釈されてきたのである。
