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細木数子の半生は「戦後日本」そのものだ―― 2度断った監督と口説いたプロデューサーが語った「地獄に堕ちるわよ」の深層

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戸田恵梨香が演じる細木数子
戸田恵梨香が演じる、若かりし頃の細木数子(写真:Netflix)
  • 境 治 メディアコンサルタント
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岡野プロデューサーは、細木氏の欲望に忠実な生き様に、ある種の憧れを感じた。だからこそ、監督には「別の感覚を持つ人を」と考え、瀧本監督にオファーした。

瀧本監督はそもそも細木氏のことが嫌いだった。嫌いな人物は描けないと2度断った末に引き受けた後、どう描くか逡巡が始まる。最初に提案したのは社会派路線だった。

「細木数子の闇をえげつなく暴いた溝口さんみたいなジャーナリストを主人公にしたものならやれる、と提案しました」(瀧本監督)

瀧本智行(たきもと・ともゆき)/監督。2005年映画『樹の海』で監督デビュー。同作で東京国際映画祭日本映画・ある視点部門作品賞・特別賞受賞。主な作品に映画『犯人に告ぐ』(07)、『イキガミ』(08)、『スープ・オペラ』(10)、『星守る犬』(11)、『はやぶさ遥かなる帰還』(12)、『脳男』(13)、『去年の冬、きみと別れ』(18)など(撮影:今井康一)

だが、岡野プロデューサーの返答は明快だった――。「それは私の見たい細木数子ではありません」。

次に模索したのは喜劇路線。全体をコメディーの文法で包めば、えげつない素材にも踏み込めると考えたが、すぐにやめた。

「宮藤官九郎さんのような才能は1ミリもねえわと思って。これは無理やと」(瀧本監督)

礼賛も断罪もしない

3つ目の構想で、ようやく突破口が開けた。自分の分身のような語り部を、作品の中に置く。最初は嫌々付き合わされた人物が、細木氏のパワーに絡め取られていく——。その構造をドラマの骨格にした。『地獄に堕ちるわよ』の語り手、小説家・魚澄美乃里の誕生だ。

こうして、「細木嫌い」な監督の分身が、「憧れ」を持つプロデューサーのビジョンの中で動き出した。

では、このドラマは細木氏を肯定したのか、否定したのか。率直に聞いた。

「一歩間違えば塀の中に入ってたかもしれんようなこともやった。行為そのものは嫌いです」(瀧本監督)

そう前置きしたうえで、こう続けた。

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