1日の東京株式市場でソフトバンクグループの株式時価総額がトヨタ自動車を上回って国内首位となった。世界的な人工知能(AI)ブームが株式市場の勢力図に大きな変化を及ぼしている。
ソフトバンクGの時価総額が終値ベースでトヨタを上回ったのはIT(情報技術)バブル期の2000年以来約26年ぶり、国内首位は1998年に当時の東証1部に上場して以来で初となる。
ソフトバンクG株はフランスでのAIデータセンター構築に最大約14兆円を投じる計画が明らかになり、14%高で取引を終えた。半導体設計子会社のアーム・ホールディングス株の上昇による含み益の拡大に加え、出資先で生成AIサービスのChatGPTを展開するOpenAIの新規株式公開(IPO)の準備なども評価され、時価総額は48兆8000億円に拡大した。
この逆転劇は、日本株市場における投資家の関心がかつての輸出立国の中心だった自動車メーカーからAI関連企業へ急速に移っていることを示すものだ。世界的なAIブームがソフトバンクGの投資事業にプラスに働く半面、自動車業界は米国の関税政策やイラン戦争、電気自動車(EV)市場の低迷などに見舞われ、為替の円安進行があっても厳しい収益環境に置かれている。
フィリップス証券の笹木和弘リサーチ部長は「AIバブルを象徴するイベントだ」と指摘し、米国でOpenAIという超大型AI企業のIPOを控えており、これに備える海外機関投資家が資金シフトを考えつつあるとの見方を示した。
日本株市場では、AI関連企業の時価総額が旧来の日本を代表する企業群を上回る下克上が相次いでいる。
東証株価指数(TOPIX)採用銘柄では半導体フラッシュメモリーのキオクシアホールディングスが約39兆円で3位に躍進し、3メガバンクの一角である三菱UFJフィナンシャル・グループを逆転。上位には半導体製造装置の東京エレクトロンやAIサーバー向け積層セラミックコンデンサー(MLCC)で急速に評価を高める村田製作所も並び、トヨタやホンダなどの自動車、NTTやKDDIなどの通信、JT、銀行などが占めた10年前と様変わりした。
ソフトバンクG株を現在最も押し上げている要因が出資先で、IPOに向けた準備を進めるOpenAIの存在だ。一時期高まったAI開発スタートアップのアンソロピックやグーグルを傘下に置くアルファベット、イーロン・マスク氏のxAIなどとの競争激化で優位性が揺らぐとの懸念も足元では後退している。ソフトバンクGはOpenAIに対し累計で650億ドル(約10兆3000億円)近く投資している。
一方、トヨタ株の年初来騰落率はマイナス13%。中東情勢の混迷を背景に原材料など生産コストの上昇が利益を圧迫しているほか、米関税の影響も重しで、今期(27年3月期)営業利益は前期比20%減の3兆円と3期連続減益を見込む。
米国企業のように自社株を除くベースでは、ソフトバンクGは前週すでにトヨタを上回り、日本企業で首位になっていた。日本では時価総額を自社株込みで計算するのが一般的だが、一部のアナリストは国際比較の際に自社株を除外している。
インベスコ・アセット・マネジメントの木下智夫グローバル・マーケット・ストラテジストは、ソフトバンクGはAIに経営資源を集中し、うまく波に乗っている半面、トヨタは自動車に乗ることのハードルを上げた原油高の影響を受けていると指摘。原油が落ち着けば、両社の時価総額が再逆転する可能性はあるが、長期的にはテクノロジー分野が日本株市場を主導するとの見方を示した。
(第3段落の株価を最新値になどに更新します)
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著者:松山かの子、堤健太郎
