求められないものは、売れない。地方に観光客を呼び込むには、地方の側に発想の転換が要る。そこで井門氏が挙げるキーワードが「東京アラウンド」だ。
「多くの外国人観光客は『東京』で検索をかけます。だからこそ、東京に紐付けた商品企画や提案が必要です。たとえば、山形の温泉地を東京から直通バスとセットにした観光商品として売る、といった方法が挙げられるでしょう」(井門氏)
もう一つ、井門氏が地方誘客のカギに挙げるのが「ランドオペレーター」の存在だ。「ランドオペレーター」とは、旅行業者の依頼を受け、旅行先の移動手段やホテル、レストラン、現地ツアーなどを手配する事業者を指す。
「日本の観光業界は、『その地域の人を外の観光地に連れ出す』スタイルが主流で、『外から来た人が観光地を回る際のお手伝いをする』スタイルが弱い傾向にあります。そのため、外国人のランドオペレーターが案内して観光地を回るような形になっています。日本の観光業界もこのビジネスを行うべきでしょう」(井門氏)
観光庁によるオーバーツーリズム対策
各地でオーバーツーリズムが問題になる中、観光庁は2023年度から「オーバーツーリズムの未然防止・抑制による持続可能な観光推進事業」を実施し、オーバーツーリズムの補助金を用意している(※9)。
自ら動き出した地域もある。観光が主要産業となっている東京都台東区もその一つだ。台東区観光課係長の弓良昌史氏は、観光振興の力点が変わってきたと話す。
「2010年代半ばまでの本区の観光振興計画では、来街者の量的拡大と受け入れ環境のハード整備が主要な焦点でした。近年は国内外の観光客数の増加と、それに伴う地域住民の生活への影響が課題となり、混雑の発生やマナー違反等の課題への対応を重視し始めています」
量から「質と持続可能性」へ。台東区はその転換を、具体的なアクションで示しているのだ。
