日本は国土の約3分の2を森林が占めており、可住地は3分の1と少ない(※3、4)。わずかな平地に人が集まっており、さらにそこに人とお金が集まるというサイクルになっているわけだ。
加えて、日本では1人当たりの実質賃金が30年にわたりほぼ横ばいとなっている(※5)。名目賃金も増えない現状で(※6)、コロナ禍以降に国内の宿泊料が高騰し、日本人による国内旅行は伸び悩んでおり(※7)、インバウンド頼みとなっている。
「分散しろ」と言われても地方に客は来ない
しかし、なぜオーバーツーリズムはこれほど問題視されるのか。人が局地的に集まることで、土地価格の上昇だけではなく、混雑やマナー違反、ゴミのポイ捨てなどの問題が起こるためだ。ここで見落とされがちな事実がある。オーバーツーリズムの影響を受けるのは、地域住民だけではない。
UNWTO(国連世界観光機関)はオーバーツーリズムを、「観光地やその観光地に暮らす住民の生活の質、及び/或いは訪れる旅行者の体験の質に対して、観光が過度に与えるネガティブな影響」と定義している(※8)。つまり、観光客の局地的な集中は、ほかならぬ観光客自身の満足度も下げてしまう恐れがあるのだ。
混雑した観光地で長い行列に並び、写真も思うように撮れない状況は、旅行体験の質を確実に損なう。住民と観光客、その双方にとってオーバーツーリズム対策は避けて通れないテーマなのだ。
そこでまず必要なのが観光客の分散化である。だが、これが簡単ではない。
「国も『外国人観光客の分散化が必要』と考えていますが、旅行の展示会や商談会などで求められるのは東京・大阪・京都・沖縄・北海道のゴールデンルートばかりです」(井門氏)
