また阿部は巨人二軍監督時代の2020年、巨人が早稲田大学とのプロアマ交流戦で敗戦した際には「試合内容が悪すぎる」として全選手に「罰走」を命じた。また打ち込まれて降板した投手にその場で「罰走」を命じることもあった。「罰走=失敗した罰として走らせる」こと自体が旧弊で、効果に乏しい指導であるとされるなか、阿部は、今の野球界では「古いタイプの指導者」という評価があったのも事実だ。
しかし阿部はかつての昭和の指導者のように、エラー、凡退した選手をベンチ裏で殴りつけるような常習的な「暴力指導者」だったわけではない。むしろ今回注目すべきなのは、阿部個人の指導者像だけでなく、巨人という球団がこの種の不祥事にどう対応したかという点だ。
巨人は、2012年、週刊文春が報じた原辰徳監督の現役時代の女性関係をめぐるトラブルとそれによる「1億円恐喝」について文春を提訴したが敗訴している。また、2022年に同じく週刊文春が報じた坂本勇人の「女性トラブル」問題については坂本に何らペナルティを与えなかった。
球団が即座に全面謝罪した背景は?
しかし今回は、事件発覚後、巨人の国松徹球団社長は「暴力は許されないことで極めて深刻に受け止めています。交流戦前夜に重大な不祥事を起こし、すべてのプロ野球関係者とファンの皆様に謝罪します。阿部慎之助監督については進退を含め処分を検討します」と即座に、全面的に謝罪した。
今回は雑誌メディアなどの取材報道ではなく、捜査関係者への取材に基づくものであり、さらに球団もコメントを出したことで、否定しにくい事実関係として広がったことが大きいだろう。同時に、昨今の「コンプライアンス意識」の変化があった可能性もある。MLB同様、著名な野球人による家庭内暴力疑惑は、プロ野球という人気稼業のイメージをダウンさせる。
この事態を放置して、阿部慎之助監督に交流戦の采配をゆだねれば、メディアは「阿部慎之助の暴力体質」として連日報じるかもしれない。SNSでも「DV体質の阿部をクビにしろ」的な論調が広がり、そのことで選手がゲームに専念できなくなる可能性もあった。球団にとってはリスクヘッジだったのかもしれない。
26日、交流戦の開幕当日の午前、阿部慎之助監督は球団に辞意を伝えた。午後には記者会見を開き、「こういう形で去るということは本当に申し訳なく思っています」と話した。
さらに「私の家族のトラブルで、多くの野球ファンの方、そしてプロ野球関係者の方、会社に多大なご心配とご迷惑をおかけしました。そして伝統ある巨人軍という監督の名も汚してしまって、とても深く謝罪したい気持ちでいっぱいでございます」と涙を浮かべながら語った。
また長女については「娘も高校3年生というお年頃な子ですので、どうか皆様温かく見守っていただければ幸いです」と語った。
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【今回のトラブルが象徴すること】
