これらはすべて「世界標準」にあわせた動きといえるだろう。
実は冒頭で述べた「シンプル運賃」の「座席指定不可」もある意味で「世界標準」に近づいたものといえる。マイレージプログラムの導入を含め、さまざまな航空業界のスタンダードをつくってきたのはアメリカだが、近年導入し、一部の顧客から不評を買っているものに「ベーシックエコノミー」運賃がある。
これは、ANAの「シンプル」同様に金額は低い代わりにさまざまな制約を設けますよというものだ。LCCとの価格競争のなかで、とにかく少しでも安い運賃を提供するという条件下で出てきたものである。
厳しいデルタ航空の運賃プラン
たとえばデルタ航空の「デルタ・メイン ベーシック」(旧ベーシック エコノミー)は2025年10月1日以降、以下のような条件となっている。
・マイル加算はなし
・ラウンジ(デルタスカイクラブ)の利用不可
・アップグレードは不可
かりに同社の最上級会員であっても、ラウンジ利用もマイル加算も不可という厳しさである。これをみると、ANAのシンプル運賃はかなり温情的であるともいえる。
厳しいのは何もデルタ航空だけではない。アメリカン航空の「ベーシックエコノミー」も2026年5月18日から同社のマイレージ上級会員の事前座席指定やアップグレードが不可となり、デルタ航空とほぼ同じ条件となった。
ユナイテッド航空のベーシックエコノミーはやや条件が異なる。
座席指定は不可だが、マイル加算があり(ただし他社のマイレージプログラムにはほぼ加算不可)。
デルタ航空・アメリカン航空よりも条件がゆるいユナイテッド航空だが、ANAの新ルールは、座席指定こそ不可なものの、マイレージの加算があるうえ、上級会員であれば、ラウンジ利用や優先搭乗もある。つまり、ユナイテッド航空よりもさらに「マシ」といえる。
とはいえ、日本国際線での最大のライバルであるJALの国内線は依然として、セール運賃を含む全運賃で事前座席指定が無料である。「グローバルスタンダード」に舵を切ったANAの選択が吉と出るのか、それともサービスの質を落とさない日本的なガラパゴスで勝負をかけるJALの選択が正しかったのか、これからの顧客の行動によって結果が明らかになるだろう。
