森田:私が初めて日食を意識したのは、あるテレビ番組の仕事がきっかけでした。1991年の7月に、ハワイで皆既日食があるというので、取材のために行ったのですが――そのときは天気が悪くて、日食を見ることはできませんでした。何となく日が陰って空が暗くなっただけでしたが、ふと見ると、近くで一人のお年寄りが涙を流していたのです。
話を聞いてみると、「これまで何度も日食を見てきたが、自分の人生の残りの時間を考えると、今回が最後のチャンスだった。最後の最後で皆既日食を見られなかったことが悔しい」と言って泣いていたんです。でもこのときはまだ、私はさほど日食に強い関心を抱いてはいませんでした。
皆既日食を追ってどこまでも
窪田:やはり実際に見ないと、その素晴らしさもピンと来ないということなのかもしれません。日食に関連するお仕事があるのが、さすが森田さんらしいですね。
森田:そこから約20年後の2009年、私はまた日食の取材で、今度は上海に行きました。しかしそこでもまた、日食を見ることはできませんでした。そうしたら、あのときハワイで涙を流していたご老人の気持ちが少しわかったんですよね。タイミングと天候に恵まれるチャンスの貴重さも実感して、私も皆既日食をしっかり見てみたいと思ったのです。
そこで翌2010年にチリのイースター島に行き、そこで初めて皆既日食を見ることができました。もうすっかり感動してしまって、日食病にかかってしまったというわけです。それ以来、毎年どこで日食が起こるかを調べて、わざわざ遠くまで見に行くようになりました。コロナ禍の世界的な移動自粛がなければ、2021年の南極ツアーにも参加する予定だったんですよ。
窪田:南極まで! それは大変な距離ですよね。本当に、皆既日食が観測できるなら場所を問わずにどこまでも出かけられるということがよくわかります。
(構成:鈴木絢子)
