2020年5月には「株価は高すぎると思う」という投稿で、テスラの株価は最大12パーセント下落した。2021年1月にTwitterのプロフィール欄に「#bitcoin」と追加すると、この暗号資産は1時間以内に20パーセントも急騰した。まさにアテンションによる錬金術だった。ジャーナリストのマルコ・デラモが言うように、フォロワーこそが彼の「真の資本」だったのである。
ものづくりの人からユーモアの人へ
しかし、いかなる優れた分析者たちも見落としがちだったのは、このモデルの中心にあるのが(たとえ悪趣味なものであれ) 「ユーモア」であった点だ。これまでのマスクは「モノを作る」起業家だった。しかし2010年代半ば以降、彼の成功は、より馬鹿げた刹那的なオンラインジョークによっても築かれていく。そうしたジョークのトーンは、2ちゃんねるのアメリカ版ともいえる「4chan」や「Reddit」そしてゲーム界隈といったトロールの温床から借用されたものだった。
「われはミームとなれり」
2019年、マスクはTwitterで「われはミームとなれり(I am become meme) 」と投稿。これはマスクにとってお決まりのジョークとなる。1945年に史上初めて核兵器が爆発するのを目にしたあと、J・ロバート・オッペンハイマーが『バガヴァッド・ギーター』から引用したとされる有名な言葉「われは死となれり、世界の破壊者となれり (NowI am become Death, the destroyer of worlds) 」をもじったものだった。
若かりしマスクが経験を積んだ1990年代のシリコンバレーにおいて、プログラマーたちの目標がフロー状態に入ること、つまりコンピュータとの一種の共生状態になることだったとすれば、「われはミームとなれり」というマスクの再三の発言も、似たものを感じさせる。彼はタイムラインに身をゆだねる。メディアに自身のメッセージを決めさせることをいとわない。
ミームになるとは、すなわち他者の参加を誘い込むような主体となることだった。マスクが大半の時間を費やすのは、聴衆への発信ではなく、聴衆への反応だ。投稿のおよそ4分の3はリプライ。それは意見の表明というより関与である。
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