1990年以来、インターネットが世界にもたらした変化は驚くべきものだった。1990年から1997年のあいだにコンピュータを保有する世帯の割合は15パーセントから35パーセントに上昇し、各世帯がコンピュータと関連ハードウェアに支出する平均額は3倍以上になった。1990年にはインターネットを使う人はほとんどいなかったが、2000年を迎える頃にはアメリカ人のほぼ半数が利用していた。最初のウェブサイトが登場したのが1991年のことで、2000年には1700万に達していた。
「人類は事実上、超個体になりつつあった」と、マスクはのちに語っている。「それまでとは質的に異なる存在だ」。
この変化の速さに危機感を抱く者もいた。SF作家のウィリアム・ギブスンもそのひとりだった。彼は1994年の時点で、インターネットについて「私が愛している点は、国家の枠を超えた、非営利のものであることだ――誰の所有物でもない」と語っている。さらに、もし企業が支配するようになると、あらゆるデータが企業のメニューから売りさばかれるような「インフォモール」になってしまうのではないかと懸念を示した。
その懸念は、すぐに現実のものとなった。インターネットの民営化から4カ月後、ドットコム・ブームが始まったのである。
現代にまで影響する歴史的IPOとは?
最初の火花が散ったのは1995年8月9日だった。マスクと同じ年生まれのマーク・アンドリーセンが共同創業したスタートアップがIPO(株式公開) を果たしたのだ。ネットスケープ社である。アンドリーセンはイリノイ大学の学生だった頃、アメリカ国立科学財団から資金提供を受け、初めて広く普及したウェブ・ブラウザ「Mosaic」の開発に携わった。その後シリコンバレーに移ってネットスケープ社を立ち上げた――IPO時点でもまだ利益は出ておらず、ソフトウェアの大半を無料で提供していた。
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【「物語」による資金集めとカリスマ化する起業家たち】
