これはマスキズムに一貫して見られる「国家との共生」という手法の代表的な事例だと言える。Zip2は公的資金で整備されたインフラの上に、コストゼロで丸ごと乗っかったのである。
それでも、Zip2は1990年代のほとんどのドットコム企業と同じ問いにぶつかった。具体的にどうやってオンラインで稼ぐのか? インターネットは商売のために設計されたものではない。そのため収益化には工夫が必要だった。Zip2でマスクは、新聞社向けに自分たちのソフトウェアをライセンス商品として提供する方向へ舵を切り、ハースト社、ナイト・リッダー社、『ニューヨーク・タイムズ』といった大手メディア企業と契約を交わした。だがマスクの真の狙いは、既存の大組織を強化することではなく、それらを飛び越して直接顧客とつながることにあった。
1999年2月、コンパック社がZip2社を3億700万ドルで買収し、マスクは2200万ドルを手にして退いた。コンパックに買収されたとき、Zip2は赤字の状態だった。マスクは報われた――だがそれは、利益の出るビジネスを構築したからではなかった。ドットコムバブルは弾けたが、その間に既存の産業を乗っ取ることに成功したのだ。
当時知れ渡っていた「ディスラプション(破壊)」という言葉がある。『イノベーションのジレンマ』でクレイトン・クリステンセンが述べた「身軽な新興企業が、新しい技術を利用して既存の大手企業を打ち倒せる」という主張のことで、マスクの行いに大義名分を与える内容だった。
プラットフォーム時代の到来
2004年、テック界の教祖的存在であるティム・オライリーは、サンフランシスコのダウンタウンで新たなカンファレンスを立ち上げた。投資家や起業家たちが会場のホテルに詰めかけ、マーク・アンドリーセンやジェフ・ベゾスといった著名人たちが3日間にわたって講演をおこなった。
テーマは当時オライリーが提唱し始めたばかりの「Web 2.0」 。バブル崩壊とともに幕を閉じたドットコム時代を「Web 1.0」とするならば、Web 2.0はその後に立ち上がった新たなインターネット経済を指す言葉だった。一言で表すならば「プラットフォーム」のことである。
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【夢物語で資金を集める技術】
