東洋経済オンラインとは
ライフ

イーロン・マスクはなぜ世界を振り回せるのか…巨大権力の源泉となった「アテンション錬金術」の正体

9分で読める
イーロン・マスク(写真:ブルームバーグ)
2/5 PAGES
3/5 PAGES
4/5 PAGES

ようやくシリコンバレーが、インターネットを使ったビジネスモデルを見つけ始めといってもいい。最初にグーグルによって完成されたこの方程式は、のちに学者のショシャナ・ズボフが「監視資本主義」と名付けたものだ。1998年、イーロン・マスクは、インターネットが「すべてのメディアの上位集合(スーパーセット)」になると予言していた。プラットフォーム時代の到来は、この予言を現実のものにした。

夢物語で資金を集める技術

シリコンバレーが体現したのは「金融ファビュリズム」という思想だ。ファビュリズム(Fabulism)とは、空想(fantasy)と現実(realism)を混ぜ合わせる文学ジャンルのことである。ドットコム世代の起業家たちも作家と同じように、インターネットが日常生活にもたらすであろう途轍もない変化について物語を語った――そしてそうすることによって、自分たちが予見した未来を実現するための資金が何十億ドルも集まった。

かつて、シリコンバレーの典型的な経営者といえば、控えめで技術肌で、エンジニアとしての腕が知られるような人物だった。スティーブ・ジョブズのような目立つタイプは例外であり、主流ではなかった。だが1990年代、テクノロジー産業に株式市場の論理が深く組み込まれていくにつれ、創業者たちはよりカリスマ的であることを求められるようになった。良い企業価値評価を得るには、会社の未来を信じてもらわねばならない。しかるべき起業家の口から語られるSFは、何もないところから金を生み出すことができる。

1990年代、スタートアップの価値はその時点での利益ではなく、将来の想定利益で測られた。マスクがほかの起業家と違ったのは、エンジニアとしての能力でも経営手腕でもなく、自分が描く未来への揺るぎない信念――そして、それを他人にも信じさせる才能だった。Zip2の資金調達の際、彼は自作した大きなケースに普通のPCを入れ、それを車輪付きの台に載せてベンチャーキャピタリストに見せ、あたかも自社ソフトがスーパーコンピュータ上で動いているかのように装った。「投資家連中はみんな『すごい』と驚いていましたよ」とキンバルは振り返っている。

次ページが続きます:
【アテンション錬金術の登場】

5/5 PAGES

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

ライフ

人気記事 HOT

※過去1週間以内の記事が対象