アテンション錬金術の登場
こうしたマスクの才能はやがて、2010年代にウェブ全体に向けて発揮されることになる。Twitterで刺激的な投稿を繰り返し、その結果生まれたのが、「関心」によって富をつくるアテンション錬金術である。これはプラットフォームのビジネスモデルからヒントを得たものだった。目標は、エンゲージメントを最大化してマネタイズすること。
マスクの場合、マネタイズは広告の販売からではなく、金融資産の価格を吊り上げることによって生まれた。誇大宣伝とユーモアでエンゲージメントを増やし、そのエンゲージメントを富へと変えたのだ。その代表例がミームと、その金融版のミームコインおよびミーム株である。
ウィリアム・ギブスンは「インターネットがインフォモールになってしまうのではないか」と危惧した。公共のネットワークが、民営化の市場に乗っ取られるという懸念だ。2010年代までに、その懸念は現実となった。
インターネットは「関心」こそが主要な通貨となるような市場へと作り替えられた。Web2.0が低金利時代における大衆の「集合知」からの搾取であったとするなら、関心によって富を作る「アテンション錬金術」は搾取にうってつけの手法であったと言える。テクノロジーと金融の融合が深まるなか、緩和的金融政策もあいまって、「ひとりの男の発言が市場を動かせる」という歴史的局面が誕生したのである。

