報道は中国・韓国のみならず、東南アジア諸国からも激しい批判を招きました。中国外務省は「日本が中国と東南アジアを侵略し、中国、朝鮮半島や東南アジア各地で暴行を働いたことは隠しようのない事実である」と厳しく抗議します。日本政府は同年8月、宮沢喜一官房長官(当時)の談話を発表し、近隣諸国の批判に耳を傾ける姿勢を表明、その後、教科書検定基準にいわゆる「近隣諸国条項」が新設されました。
なお、その後の検証で「侵略を進出に書き換えさせた」という当初の報道には、誤報あるいは過剰な単純化があったことが指摘されています。ただ、報道の正確性とは別に、それを契機として制度が動いた事実は変わりません。「教科書は国内向けに完結する文書ではない」ということが、外交を通じてそれが突きつけられた瞬間だったとも言えます。
韓国からの三つの批判――慰安婦・植民地・竹島
次に、韓国からの日本の教科書の批判を整理しましょう。これに関しては、主に三つの焦点に集中してきました。第一に日韓併合と植民地支配の記述、第二に日本軍慰安婦問題、第三に竹島(韓国名:独島)の領有権問題です。
慰安婦問題について見てみましょう。1990年代に日本の教科書に「従軍慰安婦」という記述が登場して以降、その扱いは大きな論争の的となってきました。韓国側は「日本軍による組織的な強制連行と性奴隷化」という認識を強調し、日本の教科書がこの点を明確に記述することを求めてきました。
しかし、2000年代以降、日本国内で「自虐史観」批判が高まる中、教科書から「従軍慰安婦」や「強制連行」という表現が次々と削除されていきます。2021年に行われた高校教科書検定(2022年度から使用開始)では、検定に合格した『歴史総合』12種(7出版社)のうち、慰安婦の動員が強制的に行われたことを記述しているのは山川出版社の1点のみであったと指摘*されています。韓国外交部はこれに対し、「強制性を希釈する記述など歪曲された歴史内容が多数含まれた教科書を容認したことは遺憾である」との声明を発表しています。
※アジア平和と歴史教育連帯/
